<イースタンリーグ:DeNA3-0ロッテ>◇12日◇横須賀

2軍戦に足を運び、気になる選手の動向をリポートする田村藤夫氏(62)は、ロッテの高卒4年目・藤原恭大外野手(22=大阪桐蔭)に注目した。

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藤原はチーム全体で5安打のうち2安打をマークしていた。おのおのの打席を見ると、しっかり考えたバッティングをしている。それでも1軍からは声がかからない。

球場にいた各球団の編成担当に状況を聞いてみると、今のロッテ外野陣は成長著しい高部、実績のある荻野、それにマーティンという布陣で、現状では藤原になかなか出番が回って来ないということだった。

18年のドラフトでは、大阪桐蔭から2人のドラフト1位が誕生している。中日根尾とロッテ藤原。ルーキーの根尾を私が中日2軍で見てきたから感じたことだが、追い込まれてからの対応力については、藤原の方が上だと感じてきた。スイングが止まらない根尾は「まだ時間がかかるかもしれない」との印象があった。

藤原が2年目、3年目と出場機会を増やしていくのを見て、やっぱり出てきたなと感じていた。だが、シーズンを通して1軍には定着できていない。今年もやはり、まだ苦しんでいる。それはどんなところにあるのか? 4打席をじっくり観察しつつ、相手投手の出来もよく考慮しながら見た。

藤原ならば2軍ではどんな投手にも対応できなければならない。対戦する投手のレベルを加味して考えなければ、ただヒット数だけをカウントしてもあまり意味はない。そういう意味ではこの日対戦したDeNAの東、砂田は1軍で実績のある両左腕だった。

先発東は、内容が良かった。真っすぐの最速は147キロ。カットボール、カーブ、チェンジアップをカウント球としてしっかり操っていた。1-0の打者有利なカウントでは、3つの変化球でファウル、空振りを奪い、2-0のバッティングカウントを作らせない。特にチェンジアップはカウント球、勝負球として精度は高かった。カウント球を2つ以上、しっかり制球できれば、東の実力からは1軍で十分に通用する。この日の7回3安打無失点は、内容が伴うピッチングだった。

藤原は、その東から1安打、砂田からも1安打した。決して悪くないと感じる。

第1打席、0-2から内角の真っすぐを空振り三振。東の力強さが際立ち、藤原は圧倒された。

第2打席はカウント2-1から3球続けてファウルで粘り、最後は外角へのカーブに何とか反応して、しぶとくバットに当てて遊ゴロ。確かに当てただけという見方もできるが、足がある藤原にとっては内野に転がせばチャンスはある。この場面では遊ゴロとして処理されたが、第1打席の内容から何とか食らい付こうという姿勢は見えた。

第3打席、ファウル、ボール、ボールでカウント2-1から、外角へのカットボールかスライダーに少し泳いだが、よくポイントを前にして捉え、右前に運んだ。3球三振の第1打席、食らい付いての遊ゴロだった第2打席から、さらに対応している。1軍クラスの東と左対左という図式の中で、あっけない打席内容ではなく、可能性を示すバッティングだった。

第4打席は、同じく左の砂田と対戦した。カウント1-1から、内角のツーシームと思われるボールをうまく腰の回転で右翼線への二塁打とした。

4打数2安打。内容は見るべきものはある。ただし、2軍で2安打したとしても、今の藤原はすぐには1軍から呼ばれない。ならば、さらに細かい部分を追求して、自分のバッティングを緻密にレベルアップすべきだろう。

第3打席、体が少し泳ぎながらのヒットは内容はある。ここを詳しく見ていくと、1つの課題が浮かび上がる。カウントは2-1。バッティングカウントだ。ここで藤原は真っすぐ待ちのスイングだった。だが、外角の変化球が甘く、体が反応して右手で拾うようにして右前に運んでいる。

ヒットなのだから問題ないという見方もあるだろうが、私は藤原にはさらにレベルアップした強打者になってもらいたい。このバッティングを、追い込まれた時には常に再現できることが求められる。

さらに、バッティングカウントで真っすぐ待ちで変化球に対応できたことはいいが、これがボール球だったらバットに当たってしまい、平凡な内野ゴロになってしまうかもしれない。追い込まれた第2打席のように、俊足を飛ばして内野安打を狙うのはいいが、第3打席はまだ追い込まれてない。例えば割り切ってパンと空振りして、もう1度スイングのチャンスを待つ、というやり方もある。

この場面、空振りしてもまだ2-2。追い込まれるが、もう1度しっかり振るチャンスは残る。藤原は足もある。出塁すれば盗塁の可能性も期待できる。状況に応じて、力強いスイングをもう少し優先してもいい。

バッティングは水物で、1軍では何よりも結果が欲しいものだ。そして技術的にも奥が深く、メンタル面も影響する。対戦する投手の力量との戦いという側面もある。

ヒットが打てたらなそれでOKという考え方もできるが、今の藤原はあくまでも1軍に昇格して結果が求められる。誰よりもしぶとく、何とか食らい付いて出塁するバッターを目指すべきだろう。当てに行って内野ゴロで処理されるより、同じゴロでも強いゴロで何かが起こる可能性を見いだす、そういう左バッターになってもらいたい。

二塁打を放った8回の第4打席、次打者が倒れ、2死二塁となった。二塁走者の藤原は続く打者が三ゴロに打ち取られても、二塁からホームまで全力疾走した。打者走者は一塁でアウトになったが、もしも送球がそれたり、落球すれば、ホームに返球しても間に合わないタイミングでホームを走り抜けていた。こういうところに、強いメンタルを感じる。今はライバルとの力関係でチャンスは与えられていないが、必ずチャンスはやってくる。その時に内容も結果も伴う、そして常に先を狙う足でファンを魅了してもらいたい。(日刊スポーツ評論家)