みんなの暑い夏が、始まる。第99回全国高校野球選手権大会へ向けた戦いが、いよいよ本格化する。沖縄と北北海道、南北海道は既に開幕。7月1日には愛知、鹿児島もスタートを切る。

平田徹監督(中央)の指示を聞く、万波中正外野手(前列左)ら横浜ナイン
平田徹監督(中央)の指示を聞く、万波中正外野手(前列左)ら横浜ナイン

 毎年、この時期にグラウンドを訪ねると見ている方も身が引き締まる。先週、連覇を狙う横浜(神奈川)へ向かった。ノックを打つ平田徹監督(34)のゲキが飛び、盛夏へ向け活気を帯びていた。平田監督は「手応えもあるし、不安もありますよ」と、激戦神奈川で指揮を執る2度目の夏を見据えた。

 ピリッとしたのは、この2人も同じだった。OBの法大・川口凌内野手(3年)と村田雄大外野手(1年)が、オフの合間を縫ってやってきた。川口は日本ハム浅間、高浜の同期生としてともに甲子園へ出場。村田は、今年ドラフト1位で楽天に入団した藤平尚真投手(18)と公私ともに仲が良く、昨夏、最初で最後の甲子園の土を踏んだ。

 先輩2人は、オフにもかかわらず切れのある動きを見せていた。村田は高校時代と変わらず、遅くまでティー打撃を行っていた。法大で二塁手としてレギュラーを張る川口は「こうやって来てみるとやっぱりいいですね。甲子園を目指す緊張感はやっぱり違います。目指す目標は違うけど、刺激をもらえました」。秋へ飛躍を期すスラッガーの村田は「本当に懐かしい。よく怒られていたことを思い出しました(笑い)。コンディションも良くなってきたので頑張ります」と意気込む。2人とも、甲子園を目指した“あの夏”を思い出し活力にしていた。

高校生に混じってノックを受けたOBの法大・川口凌内野手(左)と村田雄大外野手
高校生に混じってノックを受けたOBの法大・川口凌内野手(左)と村田雄大外野手
シート打撃でバントの構えをする横浜・増田
シート打撃でバントの構えをする横浜・増田

 OBが気軽にグラウンドへ戻って来られる環境は、相互で好影響を及ぼす。ドラフト候補で主軸を張る増田珠外野手(3年)は昨年まで村田とクリーンアップを打っていた。先輩の姿を見て「体の切れが違うなと思いました。いい刺激を受けたので、夏の大会に向けてより一層気が引き締まりました!」と満面の笑み。春の関東大会では勝負を避けられるような場面もあった。いかに1球で仕留められるかを考えながら、練習に励んでいる。

 現在20本塁打の万波中正外野手(2年)も状態が上がってきた。霞ケ浦(茨城)との練習試合では、ドラフト候補の遠藤淳志投手(3年)から推定125メートルの満塁弾を放った。「春は本当に打てなくて悩みまくりました。何かを思い切って変えようと思って、足を上げて打つようにしました。最近調子がいいです」と晴れやかな表情になってきた。仲良しの増田とともに目指す最後の夏。そんな思いも胸に秘める。

横浜期待のルーキー、及川雅貴投手(左)と黒須大誠投手
横浜期待のルーキー、及川雅貴投手(左)と黒須大誠投手

 頼もしい主軸2人に加え「U15(15歳以下)の大型ツートップ」にも期待がかかる。最速140キロ左腕の及川雅貴投手(1年)は、東海大相模と戦った春季神奈川大会決勝で公式戦初登板初先発。2回途中7安打6失点(自責4)のホロ苦デビューが、夏へ奮い立たせた。「ボール1個分中に入ったところを見逃してくれなかった。もっと重いボールを投げないといけないと思いました」と体を大きくすることを心がけ、現在183センチ、71キロ。厳しい練習に耐えながら、入学時より2キロ増えた体を維持している。入学後、右オーバースローからサイドに変えた黒須大誠投手(1年)も貴重な戦力だ。「下半身が使えるようになって感覚が良くなってきた。チームの中でしっかり役割を果たしていきたいです」と頼もしかった。

 高校生活最後の夏を迎える3年生。そして、大好きな先輩と出場できる最後の甲子園にかける2年生。初めての夏に挑む1年生。それを見守り、応援するOBたち-。それぞれが意識を高く持ち、刺激を与え、刺激を受けていた。横浜の初戦は7月15日。高浜-南の勝者と戦う。キラキラした夏が、今年もまたやってくる。【和田美保】