野球が結ぶ不思議な縁を感じた。15日の兵庫大会で神戸学院大付が2回戦を迎えた。同校の野球部は、昨年グラウンドを新設するのに伴い、軟式野球から硬式野球に移行していた。

 軟式では全国大会に出場経験もある。小学1年からずっと軟式野球を続けてきた主将の丹下勝海内野手(3年)は、一瞬戸惑ったという。「硬式に変わると知らなくて、びっくりした。でもみんなで頑張ろうと言い合いました」。部員は大半が残った。最初は軟式との違いに戸惑った。「バットも重くて振れなくて、ボールも重さが違う。正直これが『高校野球』なのかと思って、しんどかったです」。筋力トレーニングを欠かさず、自宅に帰ってから毎日30分の素振りを繰り返し、昨夏には最初に感じていた「重さ」を感じなくなっていた。

 「僕たちは1年間、公式戦1勝が目標でした」。今大会前まで公式戦で未勝利だったが、11日の1回戦で兵庫県大付相手に2-1で初白星を挙げた。迎えた15日の2回戦。相手は今春センバツベスト4入りした報徳学園だった。1-11でコールド負けしたが、見せ場は作った。

 7点を追う6回、主丹下の左中間適時打から1点を返した。「『しっかり全員で楽しんでいきましょう』と言っていた。最後まで一丸で戦えた。(先発の)高浜が頑張って投げてくれたのに、なかなか点が取れなくて、悔いが残ります」。喜びと悔しさを味わった最後の夏だった。

 「夏1勝を目標にしてきたチームと、優勝を目標にしているチームが対戦できる。高校野球の面白さですね」と話すのは岩上昌由さん(41)。香川西を春夏5度甲子園に導いた名将で、今大会後から神戸学院大付の監督に就任する。実は岩上さんは、報徳学園の前監督・永田裕治監督(53)の教え子“1期生”。就任直前の対戦に「野球の神様っておるよな」と今夏神戸学院大付を率いた龍王賢一監督(37)と、話していたと言う。

 「永田監督と同じ土俵で出来るといううれしさがあったので、勇退されて寂しい思いもあります」。岩上さんの根本にあるのは永田監督の教えである「全員野球」だ。「報徳の、永田監督の野球が全て。その中でアマチュア野球はどうあるべきかを追求していきたい」。野球が結ぶ不思議な縁が途切れることはない。【磯綾乃】