東邦・森田泰弘監督は選手たちに胴上げされ笑顔を見せる(2019年4月3日撮影)
東邦・森田泰弘監督は選手たちに胴上げされ笑顔を見せる(2019年4月3日撮影)

センバツで優勝した東邦(愛知)の選手たちに「監督ってどんな人?」と聞くと、「怖いけどおもしろい」「やさしい」「気にかけてくれる」といった答えが返ってくる。

東邦を率いて今年で15年目。森田泰弘監督(60)は野球から離れれば部員の「お父さん」のような一面があり、子どもたちに気を配る。石川昂弥投手(3年)らの下宿先の1階には妻・順子さんがオーナーを務める焼き肉店があり、週に1回程度のペースで、代わる代わる数人の部員を誘って食べに行く。野球の話はあまりせず、学校生活のことなどたわいもない話で盛り上がる。昨秋の東海大会優勝後には、監督夫妻と石川ら下宿生の部員3人、監督の知り合いも含めて計10人でステーキ店でお祝いもした。同じく下宿生の伊東樹里捕手(3年)は「(下宿の)3人にとってはお父さんみたいです」とはにかんだ。

部員のことは手に取るように分かる。昨年12月に腎移植手術を受け、3カ月間グラウンドから離れた。しかし、復帰してすぐに選手のけがを見抜いたという。角田ひかるマネジャー(3年)が「選手がけがを隠していても『悪そうだな』とかすぐに気づいてすごいです」と話せば、伊東も「練習試合で打たれたとき、状況、カウントや球種など1球単位で鮮明に覚えていた」とうなずく。森田監督の観察力に部員が驚かされることは多い。

そんな「お父さん」が部員の行動に涙したことがある。入院中、手元に部員からの寄せ書きでいっぱいになった色紙が3枚届いた。「監督が帰ってきたら一目見た瞬間に変わったと思われるように頑張ります」「また焼き肉連れて行ってください」。中には引退した3年生から「大学に行っても教えてもらったことを忘れずに頑張ります」とも。これには森田監督も「入院中、泣きました」と励まされた。グラウンドにいる選手と病院にいる監督。顔を合わす時間はなくても、互いを思う気持ちはなくならなかった。

センバツにはマネジャー陣が作ったマスコットを監督、部長、コーチ、部員全員がおそろいでお守りとして持った。

優勝した4月3日は森田監督の60歳の誕生日の前日だった。54人の子どもたちから、少しだけ早い、でも、とっておきの誕生日プレゼントを贈られた。【望月千草】

選手たちに声をかける東邦・森田泰弘監督(左)(2019年4月2日撮影)
選手たちに声をかける東邦・森田泰弘監督(左)(2019年4月2日撮影)