東京新大学野球の創価大に、井上建コーチ(4年)が“就任”した。1日から、八王子市内の同大グラウンドで行われている練習に合流。さっそく一緒に汗を流している。指導者という職業に「野球に携わる仕事はしたいと思っていましたが、まさか指導者になるとは予想していませんでした」と明るく話した。

内野手として創価大に進学。俊足と安定した守備で1年秋からリーグ戦のベンチに入った。しかし徐々に、高いレベルで勝負する周囲との差を実感。岸雅司前監督の「試合に出ている選手だけが勝者ではない」という言葉に背中を押され、3年3月に志願して学生コーチに転身した。「全員が上のステージでできる訳ではない。試合に出られない中でもどうやったら戦えるかを考えて、サポートしようと思いました」と振り返った。

並行して就職活動を行い、一般企業から内定をもらった。昨秋、あいさつのためグラウンドを訪れた際、堀内尊法新監督からコーチ就任の打診を受けた。突然の話に驚き、悩んだ。「成長させていただいた母校への恩返しと、真剣に日本一に向けて指導していけたらという思い」で決断した。

昨年、1部優勝46回の強豪へと成長させた岸監督が定年に伴い退任。コーチだった堀内氏が昇格し、後任のコーチ選びが水面下で進められていた。プロ野球選手を多く輩出している大学だけに、周囲からは「元プロのコーチを招聘(しょうへい)するべき」との声も挙がった。しかし、堀内氏が井上コーチを推薦した。「メンバー、途中から補欠、学生コーチと3つを経験していることは、最高の実績。学生と距離も近く、心のケアもできる」と新コーチに期待を寄せる。

昨年11月の野球部引退から約3カ月。コーチ業は、毎日が勉強だ。「堀内監督のような熱い指導にこだわって、日本一を目指します。自分自身も、選手に負けないように取り組んでいきたい」と新しいスタートを切った。【保坂恭子】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)