愛工大名電が元気だ。春季愛知県大会では25日に東邦を破って4強に進出。春9回、夏12回の甲子園出場を誇り、05年センバツ優勝の名門には「イチローが歩んだ道」が今も息づく。日米通算4367安打を放ったイチロー氏(47=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)の母校で後輩が夏の甲子園を目指す。不世出の大打者は高校時代から型破りだった。当時、コーチとして指導した倉野光生監督(62)らに聞いた。ナインに受け継がれている野球への情熱に迫る。【取材・構成=酒井俊作】

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チームを支えるのはプロ注目トリオだ。左投げ左打ちの田村俊介投手(3年)は「甲子園に出て優勝が目標」と気合十分。投打の二刀流で左投げだが三塁も守る。倉野監督も「野球センスの塊だった工藤公康に引けを取らない。二刀流でメジャーに行ってほしい。イチローもプロで通用するか分からないレベルだった。今の時点では田村の方がいい」と評する。

春、背番号1をつける最速147キロ右腕の寺嶋大希投手(3年)も今秋ドラフト候補だ。しなやかな腕の振りで楽天岸をほうふつ。「肩甲骨が柔らかく、しなって投げる」と自己PRする。スライダーは一流の2700回転に達する。指揮官も「球にスピンをかける能力はすごい」と話した。

野崎健太投手(3年)は3人で最も馬力があるという。最速148キロで「スピードは3人で一番自信がある」と胸を張る。県大会準々決勝の東邦戦は田村、寺嶋から野崎に継投してサヨナラ勝ち。チームスローガンの「超競争心」を体現し、29日の準決勝、5月1日の決勝に挑む。(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

◆倉野光生(くらの・みつお)1958年(昭33)11月7日、名古屋市生まれ。名古屋電気(現愛工大名電)、愛知工大では主将で捕手。81年卒業と同時に名古屋電気コーチに。97年秋に監督就任した。05年センバツで優勝に導き、04年もセンバツ準優勝。主な教え子に工藤公康(現ソフトバンク監督)イチロー、山崎武司(楽天など)ら。

◆愛工大名電 1912年(大元)に創立された私立校。校訓は誠実・勤勉で普通科、科学技術科、情報科学科に男女が学ぶ。野球部は1955年(昭30)創部。甲子園は春9度で優勝1度。夏は12度出場。野球部員は51人。所在地は名古屋市千種区若水3の2の12。岩間博校長。

愛工大名電のプロ注目右腕、寺嶋はブルペン投球を行う
愛工大名電のプロ注目右腕、寺嶋はブルペン投球を行う
愛工大名電のプロ注目右腕、野崎はキャッチボールを行う
愛工大名電のプロ注目右腕、野崎はキャッチボールを行う
プロ注目の左から野崎、田村、寺嶋は愛工大名電合宿所内の甲子園優勝旗前でガッツポーズ
プロ注目の左から野崎、田村、寺嶋は愛工大名電合宿所内の甲子園優勝旗前でガッツポーズ
愛工大名電の本拠地球場通路には工藤公康氏のパネルのほか、イチロー氏の大リーグ時代のパネルやスポーツ紙が飾られている
愛工大名電の本拠地球場通路には工藤公康氏のパネルのほか、イチロー氏の大リーグ時代のパネルやスポーツ紙が飾られている
愛工大名電合宿所の1階廊下にはイチロー氏の高校時代の成績表が貼られている
愛工大名電合宿所の1階廊下にはイチロー氏の高校時代の成績表が貼られている