東京オリンピックによるプロ野球公式戦の休止期間。遊軍記者の私は、高校野球神奈川大会を主に取材した。本項タイトルからは少し外れる内容かもしれないが「プロ野球選手の卵」が多く出場した激戦区で、特に印象に残った選手について記しておきたい。

「平成の怪物」こと西武松坂大輔投手(40)が現役引退を表明したこの年。出身の横浜高校が3年ぶり19度目の甲子園出場を決めて注目されたが、準優勝の横浜創学館のエース山岸翠(あきら)投手(3年)も脚光を浴びた好素材だ。

181センチ・81キロ。阪神青柳、DeNA平良、巨人戸郷らを研究したサイド気味の右スリークオーターから繰り出す最速149キロのキレのいい直球が持ち味。縦横のスライダーで三振を量産し派手なガッツポーズを繰り出す熱血漢で、7月26日の慶応との準決勝では12安打を浴びながら9回を2失点で完投。「ヒットは3割の確率で打たれると思うので、残りの7割をどう取るか。ガンガン振ってくるバッターだからこそ、ボールを動かしてゴロを増やしていこうと思いました」というクレバーな一面も併せ持つ。試合後の取材の受け答えも常に的確で落ち着いており「ピッチングIQ」の高い、しっかり者という印象を受けた。

横浜との決勝戦こそ4回16安打11失点と打ち込まれたが、今大会チーム7試合中6試合に先発し、計39イニングで存在感を放ったエース。今後の進路については「監督とも相談しながら、いろんな選択肢を考えていきたい。高卒、大卒、社会人と、どの道でも可能性はあると思うので。最終的にプロに入れればという思いはあります」と、じっくり考える方針だ。

また山岸の妹京美(みやび)さん(1年)は同校マネジャーを務めている。これからもチームを支えていく妹には「やれることはやっておいた方がいい。出来ることから手を抜かず、後悔の残らないようにやっていくことが一番」と伝えるという。届かなかった甲子園の夢は後輩たちと妹に託し、次なる大目標へ-。若き右腕の今後のさらなる成長が楽しみだ。【遊軍=鈴木正章】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)