今秋ドラフトで明大・宗山塁内野手(3年=広陵)に注目が集まる中で、もう1人。静かに闘志を燃やす選手がいる。

最速154キロを誇る右腕、明大・浅利太門投手(3年=興国)だ。「宗山がドラ1で行くと思うので、自分もドラ1を目指しています。追いつきたい。宗山に負けたくない気持ちもあります」と力を込めて話した。

14年連続のNPB指名継続中の名門大は、宗山がすでに熱視線を集めている。

1月の練習始めでは、NPB7球団10人のスカウトが視察に訪れた。今月14日から行われた静岡・沼津キャンプの初日では、テレビ、新聞、雑誌含めたメディアが大勢集まった。

野手と投手でポジションは違えど、同じプロを目指す者として宗山の注目度の高さには火がつく。

浅利は3年春に満を持してリーグ戦デビュー。春秋ともにリリーフとして登板し、9試合を投げて16回、14奪三振、防御率1・69の好成績を残した。186センチ、84キロの長身から力感のないフォームで、打者がアジャストしにくい角度ある球が持ち味だ。ここまで自己最長は3イニング。もちろんエースを目指している。先発デビューに備え、オフは体力強化を重点的に取り組んでいる。

昨年のリーグ戦終盤には、疲労の蓄積を実感した。「足が動かなくなったり。特に自分はインステップしてリリースのタイミングがズレる。ずっと良いフォームで投げられるように、球数を増やしています」。これまでは40、50球で終えていたピッチング練習も、100球を上回る球数を投げ込んでいる。

田中武宏監督(62)も「ようやく注目されても良いかなというところに来た。あの学年は甲子園がなかったので、(ここまで)注目されることなく。高校の時はもっとぺろーんとした体でね。育成プログラミングに乗っ取って成長を続けてくれた」と浅利の成長にさらなる期待を込める。

宗山とは1年生で同部屋。1年春からレギュラーをつかむ同期を間近で見てきた。ともに人見知りといい「自分もなかなか心開かないですけど、宗山はもっと時間がかかる。仲良くなったらしゃべりますけど、ふざけたりするタイプではないです。あまり口数は多くないですね。インドア派ツートップですね」と笑う。宗山に次ぐ、明大の顔となる。

宗山とそろって「ドラフト1位」の夢はブレない。昨秋のドラフトでは、3人の先輩がNPBの門をたたいた。当時を「人ごとというか、あまり来年のイメージが湧いたわけではなく。今年自分がドラフトにかかるかもしれないっていう実感もまだないんですけど」と昨年はあまり自分と重ね合わせられなかった。

最終学年でエースになれば、おのずとあの光景が現実味を増してくる。「自分が主力にならないといけない。まずはリーグ戦ですね」と4年春でさらなるブレークを誓った。

2024年。想像もしなかった未来を切り開く1年にする。【佐瀬百合子】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

ガッツポーズする浅利太門(2023年10月撮影)
ガッツポーズする浅利太門(2023年10月撮影)