東京6大学リーグには、甲子園を経験した野球エリートが大集結する。厚い選手層で繰り広げられるレギュラー争いは熾烈(しれつ)で、生き残りは至難の業。甲子園を経験し、明大でもがく瀬千皓(せ・ちひろ)外野手(2年=天理)に話を聞いた。

瀬は高校時代は4番。21年ドラフトで日本ハムから1位指名された達孝太投手(19)とともにセンバツ4強へけん引した、右の強打者だ。明大では1年春からベンチ入りを果たし、東大戦で初打席初本塁打と華々しいデビューを飾った。

だが、レギュラー定着には至っていない。「あのホームランとか、活躍したことは過去の栄光だって思ってて。一からアピールしようっていう感じですね」と、デビュー戦は遠い記憶となっている。

「強みは打撃」と話すが、ここまでリーグ通算成績は打率2割5分、1本塁打。「その打率だともっとホームラン出とかないとダメですし。ホームランも最初の1本しか打ててない。もっと打率を残さないといけないなと思います」と、数字に物足りなさを感じている。

今春から3年となり、大学野球も折り返しを迎える。自分に足りないものは、何か。直近の練習試合動画を見て自己分析をした。「なんで打率が低いかなって考えた時に、宗山さんとか打率が高い選手と比べてボール球を振ってしまうことが多くて。特に低めとか、外に逃げていく変化球とか。まだ追い込まれてない若いカウントの時に振って自分を苦しめてしまう。追い込まれたらプロ野球選手でもやっぱり打率は下がるじゃないですか。選球眼を良くするにはどうしたら良いのかなってコーチにアドバイスをもらって。そこで(打つ時に)開いて打ってたんで、開かないように開かないようにっていうのは、ひたすら意識しています」。上級生の自覚が高まり、より一層目の色を変えて取り組んでいる。2月29日の今季初対外試合では、途中出場ながら2安打で良い滑り出しを切った。

3年生でブレークへ-。「親戚以外で会ったことないですね」と笑う「瀬」の名字は、全国で約340人しかいない。春季リーグ戦に向けて「シーズンを通してずっと出続けられたことがないので。レギュラーを目指したい」と決意は固い。神宮のスコアボードのスタメンに並ぶ「瀬」を、当たり前の光景にしていく。【佐瀬百合子】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)