プロ初完封を挙げた青柳(右から2人目)と連勝を祝う阪神ナイン(撮影・奥田泰也)
プロ初完封を挙げた青柳(右から2人目)と連勝を祝う阪神ナイン(撮影・奥田泰也)

ようやくマルテが1軍に上がってきた。9回の打席でファウルで粘った末、初安打が出た。それより光ったのは8回の一塁守備かもしれない。無死一、二塁からの一ゴロに体勢を低くし、捕球。微妙なタイミングだったが二塁へ送球して一塁走者を封殺。1死一、三塁とした。次打者・平田良介の併殺につながる大きなプレーだったと思う。

もっとも新加入の助っ人に対する期待はやはり本塁打を含む長打だろう。そこは、まだまだ、これから。正直、打ってくれればいいし、ダメなら他のメンバーでやるしかないぐらいの気持ちでいた方が精神的にはいいと思う。

それはともかく、もう1人、ファームには「大物」がいる。言うまでもない右腕・藤浪晋太郎だ。12連戦で先発、ブルペンともに投手が苦しいこの時期に、潜在能力にあふれるあんな投手が1軍にいないのは、もったいないというか困ったものだ。

制球難に苦しんでいるのは周知の通り。そこでいつも思うのは、この日、好投した青柳晃洋のことだ。4年目で初の完封劇。17日ヤクルト戦(神宮)で7回無失点のまま降板したとき、この欄で「もっと投げさせてほしかった」と書いたが、この日は指揮官・矢野燿大が取った執念の続投策が実を結んだ形だ。

その青柳が制球難で苦しんでいたのは虎党なら知っているはずだ。17年6月30日ヤクルト戦(甲子園)では「1イニング3死球」というプロ野球ワーストタイ記録もつくった。制球だけでなく一塁送球など守備にも不安があった。

それを昨季、2軍監督の矢野、同じく2軍投手コーチだった福原忍の指導で8割程度の力で投げるなどの“脱力投法”を行い、ここまで成長してきた。その姿を見て、藤浪にとって、いい教材がいるではないか。そう思っていた。今月上旬、青柳に話してみると反応はこんな感じだった。

「いやあ。全然、違うと思いますよ。ボクは元々、下手くそだったんですから。藤浪くんは元々、すごい投手だったんですよ。プロに入ってからも。それが、いま、調子を落としているわけでしょ。そこは違うと思いますよ」

1歳年下の藤浪を気遣いながら、そんな風に話してくれた。同じ制球難でも置かれている状況で違うということか。野球エリートだった藤浪と、いわば雑草のようにきた青柳とは違うというのはプロの感覚なのかもしれない。

それでも、とも思う。入団の経緯は違っても同じプロ。青柳にできて藤浪にできないことはない、と信じる。元号替わりには間に合わなかったが、早くその勇姿が見たい。(敬称略)

キャッチボールで汗を流す藤浪晋太郎
キャッチボールで汗を流す藤浪晋太郎