スイープは簡単ではない。ましてや首位巨人戦だ。最大の敗因は岩田稔の乱調だろう。敵地でカード勝ち越しを決めたし、敵将・原辰徳に記念星も献上せず、まずはよかったと思う。

それでも…と思ってしまうのはいろいろ理由がある。大きいものは“役者”の問題だ。この日、一番、虎党を沸かせたのは記念の1000得点を豪快な一発で決めた福留孝介だろう。前日は同点弾のマルテ。そして言うまでもない26日は新加入のソラーテだった。

ここまで書いて、分かる人はもう分かる。ベテラン、外国人選手ばかりが目立っている。この日は前日に死球を受けた糸井嘉男が欠場し、急に打線が元気をなくしたようにも見えた。

若いのはどないした。出てこんやないか。虎党がいつも言うポイントだ。前任監督の金本知憲が変革しようとしたのは、この点だった。もちろん現在の指揮官・矢野燿大の仕事もそこにある。「育てながら勝つ」。難しい課題に取り組んでいるのも同じだ。

大山悠輔だ。前日は延長11回に決勝右前打をマーク。26日の1戦目も先制犠飛を放った。4番打者として苦しみながらも、なんとか仕事をこなしている。そこは評価したい。

それでもなんだかモヤモヤするのは「やったるで!」というムードが感じられないからだ。雰囲気でものを言って申し訳ないのだけれど、序盤に決まったこんな試合、福留が放ったような一撃を見せてほしい。

4番がガツンと打てばこそファンは「しゃあないな。大山は打ちよったし。また明日や!」となる。この見立ては間違っているのか。浜ちゃん、いや打撃コーチ浜中治よ。

「う~ん。点差がついたから長打を狙うというのはないですね。打撃なんて一瞬で崩れてしまうものなんで。自分もそうでした」

こちらにそう指摘した上で、しかし、浜中も感じていることを率直に話した。

「大山が豪快なスイングをできなくなっているのは課題ですね。スイングに怖さがない。怖さがなければダメですから。しかも本塁打の出やすい東京ドームなのにそんな感じがなかった。そこですよね」

感じていたことの正体はまさにそれだ。結果以前に「甘くいったらやられそうだ」と思わせる怖さ。主軸を打つ打者には、技術と同様、そういう気配が必要だろう。たとえ空威張りであっても。(敬称略)

巨人対阪神 9回表阪神2死一塁、最後は原口が右飛に倒れ試合終了となる(撮影・清水貴仁)
巨人対阪神 9回表阪神2死一塁、最後は原口が右飛に倒れ試合終了となる(撮影・清水貴仁)