阪神対ヤクルト 3回表ヤクルト1死、小川監督(右)と宮本慎也コーチ(中央)は本塁打を放ったバレンティンを迎える(撮影・宮崎幸一)
阪神対ヤクルト 3回表ヤクルト1死、小川監督(右)と宮本慎也コーチ(中央)は本塁打を放ったバレンティンを迎える(撮影・宮崎幸一)

甲子園は異常とも言える暑さだった。7月でもこんな日はあまりなかったのでは…と感じるほどの酷暑ぶり。9月にすぐ涼しくなるとは思っていないが、それにしても、だ。

しかし球界はすでに秋の気配だ。すべての球団が「優勝」の2文字を掲げる開幕から約半年。優勝を争うチームには熱い日々だが、そうでない球団は秋の気配が濃厚になってきた。

試合前、ヤクルトのヘッドコーチを2年間務めた宮本慎也と少しだけ話した。すでに辞任を球団に伝えていたが正式に発表された。指揮官・小川淳司の辞任も同時に発表された。

「お疲れさまでした」と声を掛けると「どうも」と笑顔だ。今更とは思ったが「辞めるんやねえ」と言うと、こんな話をした。

「監督がどうされるかとは別に決めていました。誰かは責任を取らないとダメですから。結果がすべて。監督だけの責任じゃない」

宮本は、選手を褒めて乗せて…という今流のコーチではなかったと思う。態度や礼儀についてしかっている場面を見たこともあったし、書いたこともある。

いわゆる「こわいコーチ」で時代には合っていなかったのかもしれないが、いい指導者だと思う。そんな宮本に阪神で注目しているのは誰? と聞いてみた。

「彼がここまでやるとは思っていなかったというのはありますね。対応能力が高かったということでしょう。戸惑ってもそれに対応していく力ですね。それがよかったんでしょう」

そう即答したのはルーキー近本光司についてだった。宮本は大阪ガスに臨時コーチに行った経験があり、近本も教えている。そのときは「ドアスイング気味というかバットの軌道がやや外から来るので、どうかなと思っていた」という。

しかし、今、新人の安打数記録に挑戦するところまで来ている。それを「対応能力」と表現した。宮本と話す近本の様子を見たこともあったが楽しそうだった。「こわいコーチ」と話している感じではなかった。

こわい人が相手の会話でも慣れれば大丈夫なもの。最初は不可能なことでも状況に対応できれば可能になる場合もある。問題は自分が慣れられるか、どうか。近本にはそんな能力があるのかもしれない。

最下位相手に痛過ぎる敗戦。希望は来季に…、となりつつある。近本にはさらにずぶとく成長し、阪神を引っ張っていってほしい。(敬称略)

阪神対ヤクルト 6回裏阪神1死、近本光司は左前安打を放つ(撮影・奥田泰也)
阪神対ヤクルト 6回裏阪神1死、近本光司は左前安打を放つ(撮影・奥田泰也)