「ほれ、見てみい! こんなもんや!」。開幕戦と言えば思い出すのが、このセリフだ。闘将・星野仙一で優勝した03年。3月28日、敵地・横浜スタジアムでの開幕戦に負けた後、当時、虎番キャップだったこちらに向かって星野はそう言い放った。

金本知憲、伊良部秀輝らの大補強を行い、優勝の可能性を感じての開幕戦だった。相性のいい横浜戦にエース井川慶を立てたが2-4での敗戦。それを受け、星野は言い放った。その言葉からは「勝負はそんな簡単なものじゃない」という強い覚悟を感じたものだ。

そして、この日。野球ファン、虎党が待ちに待った開幕戦に阪神は敗れた。巨人は通算6000勝だという。2-3の逆転負け。ここ一番でプロ初出場の選手に「代打バント」を命じた敵将・原辰徳の大胆な作戦。巨人の引き立て役に終わった試合としか言えない。

星野の話は17年前のことだが、もう少しだけ近い過去、つまり2年前、18年の開幕戦も思い出深い。この試合、阪神打線はこの日と同じ巨人菅野智之を攻略し、5-1で快勝した。福留孝介、大山悠輔に本塁打が出るなどあまりの勝ちっぷりに体が驚いたのか、夜にホテルで高熱を出した記憶まである。今なら、ドキドキするところだ。

だが18年の阪神はその後の2試合で連敗、開幕カードを負け越して発進した。そしてシーズンを終えての結果はまさかの最下位に落ち込み、金本は指揮官の座を退いている。

そんな記憶があるからか、この日の展開を何とも言えない思いで見ていた。先発西勇輝の好投、3回の先制弾。さらに5回には勝ち越し打まで放つではないか。このまま勝てば…。こんな記憶に残る勝利もないかも。そう思っていた。

しかし敗戦という結果を受け、星野に倣えば「こんなもんや」という、なぜか少しだけ落ち着いた気持ちでいる。3番マルテは猛打賞だったが期待のボーアは快音なく終わった。課題の得点力、打線がつながらなければやっぱり勝てないということだろう。

星野阪神は開幕戦に負けた後、連勝。その後の戦いで18年ぶりのリーグ優勝をもたらした。開幕戦の結果が最終順位に直接、つながるものではない。もちろん楽観視しているわけではない。とにかく打たなければ。特に東京ドームだ。まずは20日。今季初勝利を打線でもぎとれ。(敬称略)