10月22日はイチローの誕生日だ。47歳になった。昨年、東京ドームで行われた大リーグ開幕カードを最後に現役引退。異例の“深夜記者会見”に寂しい思いで参加したことを思い出す。

40歳を過ぎた頃だったか、オフに神戸で練習しているイチローと「引退」について雑談したことがあった。かなり気を使ったが、そのときはこんな言い回しでそれを表現していた。

「野球選手の場合はね。自分がやる、やりたいって言ってもチームに契約してもらえなければどうしようもないですからね。そういうことですよ」

阪神福留孝介が来季の構想から外れていることが明らかになった。中日、大リーグで活躍し、阪神に移籍してきたときは驚いたが持ち前の振り切るスイングにはいつも感心させられていた。しかし、やはり、どんな選手でも年齢には勝てないのか。今季は明らかに昨季までとは違っていたように思う。

昨季の鳥谷敬もそうだが、どの球団でもベテランが“構想外”になるのは避けられないことだ。鳥谷のときは、何というか、阪神球団がかなり悪者にされた印象があった。球団側に立つつもりはないが、それには少し違和感を感じていた。

「来季の構想には入っていません。功労者としてウチで花道をつくりたいのですが…」。そう言って引退から指導者への道筋を示した球団側に対し「自分はまだやれると思っています。戦力外は仕方ありませんが引退はしません」と、鳥谷がそれを断って退団したというシンプルな話だ。

「球団側の持っていき方次第で考えも違っていたのでは…」などというのは鳥谷に対して失礼な話だろう。福留にも現役続行の意思があるようで同様の結果になるかもしれない。

ただ選手側にすれば「キッチリ勝負させてほしい」という思いは常に残ってしまうものかもしれない。これはなかなか難しいのだが、その意味でこの広島戦、少し考えさせられることがあった。マルテの復帰で大山悠輔がスタメン右翼に入ったことだ。

大山は三塁手として本塁打、打点王を争っている。いまは大事な時期だろう。慣れない守りにつけば、そちらに気持ちが向いて打撃に影響するのでは…と心配する。野球の花形「4番・三塁」で看板を張れるまでの選手に大山は育ってきている。そこは尊重してほしい点だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対広島 1回裏阪神1死、大山は右に飛球を放ち鈴木の落球で二塁に進塁する(撮影・上山淳一)
阪神対広島 1回裏阪神1死、大山は右に飛球を放ち鈴木の落球で二塁に進塁する(撮影・上山淳一)