やはり今季は流れが来ている。そう思ってしまう雨天中止だ。中日との「通算2001回戦」は13日に延びた。先発予定だった青柳晃洋にとれば「雨男」の面目躍如というところか。

これでローテーションに厚みができたのではないか。16日巨人戦は先発投手が注目される。10日にガンケルが出場選手登録を抹消。新加入アルカンタラは14日先発だ。誰かを昇格させるかブルペン・デーにするか。16日の先発は課題だったはず。

しかし、これで青柳を回す策も取れる。ここまで好調な戦いを続けてきた流れの中で巨人3連戦を迎えられるということだ。やはり追い風が吹いている。

2000試合も戦った竜虎決戦で忘れられないのは03年7月27日、ナゴヤドームでの試合だ。阪神が8-1で勝った内容ではなく、この試合、指揮官がベンチから消えた“緊急事態”が記憶に残っている。

阪神の監督は、竜虎の両軍で指揮を執った闘将・星野仙一だった。高血圧の持病があった星野は連日の激戦に興奮が続き、疲労もしていたがついにこの試合中にダウンしてしまった。

「ベンチに星野監督がいない」。カメラマンから連絡を受けた瞬間、頭に浮かんだのは名古屋市内の宿舎でこのカード前にともにお茶を飲んだ席での話だ。星野は常に担当記者との時間をつくることを意識していた。そのときも宿舎ホテルのラウンジで各社の虎番キャップ連中が話しているとフラリ姿を見せた。

当時、阪神は早々にマジックがつき、優勝確実モード。「知り合いの多い名古屋遠征は気分いいでしょう」と言った。それに「アホか」と反応し、こんなことを言った。

「ファンもマスコミもみんな優勝やと思ってる。それを今から逃してみい。どれだけ責められることか。そうなったらオレは日本にいられんぞ。それを考えると寝られん」

闘将をしてそこまで重圧を感じるのか。あらためて人気球団で監督を務めるおそろしさを実感した。実際に08年、2位に一時は大差をつけながらも優勝を逃した岡田彰布は慰留されながら職を辞している。

現在の指揮官・矢野燿大がその重圧を感じるのはまだ先だ。そんな状況でもない。今は目の前の敵と戦うだけだ。それでも“時期”が近づいてきたとき師と仰ぐ星野の心境が分かるのかもしれない。虎党もそのときを待っている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)