「天が味方をしてくれた-」。指揮官・矢野燿大が率直に口にした言葉の通りだろう。7回、巨人が反撃モードに入ったところで雨が強くなり、コールド決着。名将・原辰徳が両手を上げる「WHY? ポーズ」は気の毒だったが、こればかりは仕方がない。阪神にとって大きい勝利だ。

とはいえ生意気を言わせてもらえれば「天が味方をしてくれた」のには理由があるからではないか。この日、阪神は今季の“記録”を更新した。途中で終わったとはいえ、この試合は無失策。これで6月27日DeNA戦からヤクルト3連戦をはさみ、この日で「甲子園5試合連続無失策」となった。これは今季の最長記録である。

5試合続けて無失策? 本拠地で? それがめずらしいの? 他球団からはそう言われそうだが、そこはそれ、阪神である。ここまで54失策は12球団ワースト。守備力が近年続く課題なのは知られるところだ。

もちろん評論家など関係者の間では「人工芝の球場をホームにしているチームと同じに論じるのはいかがなものか」という声もある。それも分かるが逆に、そこを自軍の“ストロング・ポイント”にできればいいのにな、といつも思う。

つまり、この日のような展開だ。巨人に3回、連続失策が出た。佐藤輝明の一ゴロをウィーラーがそらし、中野拓夢の遊ゴロを名手・坂本勇人がこれまたそらして無死一、三塁。これで得点できなければおかしいだろう-という状況をつくってもらって、はたして近本光司の二ゴロで1点。無安打で先制に成功し、流れを持ってこれた。

土のグラウンドはバウンドが不規則になるなど守備が難しいのは誰でも知っていることだ。人工芝に慣れたビジターの選手が失策するのもおかしくない。だが阪神選手にすればホームだ。「オレたちは慣れてるから」とスイスイ、プレー。それが本来あるべき姿なのでは…と思うのだ。

もちろん守備も個人の技量によるところが大きい。それでも「やればできる」ということだろう。5試合連続無失策が10試合、15試合となればチームの白星も増えるはず。「打撃は水物」だし、投手力だって波があるだろう。今こそ「弱い」と言われ続けた守備力でカバーする機会かもしれない。巨人に3・5ゲーム差をつけて“底”を抜けつつある今こそ「しまっていこうぜ」である。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対巨人 7回表途中、降雨により試合続行不能のためコールド負けが決定し、球審に説明を受けた後、引き揚げる原監督(撮影・狩俣裕三)
阪神対巨人 7回表途中、降雨により試合続行不能のためコールド負けが決定し、球審に説明を受けた後、引き揚げる原監督(撮影・狩俣裕三)