野球好きにとって昼間は侍ジャパンの応援、夜はひいき球団のエキシビションマッチと忙しい日だったかもしれない。虎党は当然、阪神戦だ。しかし内容は違った。正直、阪神打線にはちょっとしっかりしてほしいと思う試合である。

もちろん勝ち負けの話ではない。6失点の先発・伊藤将司は「普段投げない球(スライダー)を試してみた」という話をしていたようだが、それはそれでいい。後半戦のブルペンを充実させるために若い投手を試しているのも分かる。実際に戦力になれるかどうかはともかく意図は明確だ。「う~ん」と思うのは打線というか攻撃面だ。

佐藤輝明の決勝2ランで勝った27日のロッテ戦。その8回裏、阪神は無死一塁で途中出場の北條史也に当初、犠打のサインだった。しかしバントをファウルすると最終的に打って出て中飛。その直後に佐藤輝の2ランが出た。

広島3連覇監督・緒方孝市(日刊スポーツ評論家)はエキシビションマッチを前に阪神がやらなければならないこととして「細かい野球の徹底」を挙げていた。持ち味の機動力にバントを絡めたサインプレーをしっかりテストしなければならないという見立てだ。

サンズ、マルテ、佐藤輝明らの1発が売りの阪神打線だが終盤はプレッシャーのかかる接戦が多くなるはず。そこで勝敗を分けるのは「サインプレー」というのだ。だからこの期間を無駄にせず、細かいプレーに自信を持つことが重要と強調していた。

その視点で見れば阪神ベンチにはそこを徹底しようという様子はうかがえない。もちろん、まだ2試合。まずは投手関連、そして攻撃面と順序立てて考えているのかもしれない。だがこの日のようにほとんど走者が出ない展開では何も試しようがない。やろうと構えていてもできないときはある。そこが難しい。

侍ジャパンの初戦は小技が効いた。強敵・ドミニカ共和国を相手に甲斐拓也の同点セーフティースクイズが大きかった。日の丸を背負った試合で決めるバントはさぞかし、しびれるだろう。そんなテンションをこの練習に求めるのは酷かもしれない。だが首位で終盤まで行けば、阪神攻撃陣に迫ってくるのはそれに引けを取らないレベルのプレッシャーのはず。緒方の言葉を借りずとも機会を逃さず、しつこくやっておいて損はない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)