「ホンマに優勝するんちゃうか」と3試合続けて同じフレーズで始める。今季一度も喫していない「4連敗」を防いだ今季53勝目はある意味、会心の勝利だったのではないか。

功労者は間違いなく先発・秋山拓巳だがベンチの策も効いた。それを象徴するプレーは7回の守備かもしれない。2点を追う中日はビシエドからの打順。その主砲は一、二塁間に強い打球を放った。これに飛びついたのが6月1日以来のスタメン木浪聖也だ。

グラブに当てたが捕球できない。これで打球の勢いがそげ、コースも変化。これを見てビシエドは二塁へ。だが右翼・佐藤輝明がいい送球を見せ、刺した。二塁を欲張る必要があったかどうかは微妙だが意欲は分かるし、俊足選手ならセーフだろう。だが何より、久々のスタメンで2安打もマークして燃える木浪のハッスルプレーがピンチを防いだ…という見方をしたい。

「糸原健斗に疲れが見える。代打で結果を出して調子を上げている木浪らを使っても」…と前日、このコラムでチラッと触れた。こちらが書くぐらいだから指揮官・矢野燿大も当然、分かっている。この日は糸原に代え、木浪を7番二塁で起用、中野拓夢を2番に上げてきた。

それがピシャリはまった場面は6回にもあった。1死から近本光司が小笠原慎之介からこの試合初めて四球を選ぶ。ここで2番・中野が近本との間で見事にランエンドヒットを決めた。近本がスタート。二塁ベースカバーに入った遊撃・京田陽太の左側にうまく打球を転がしたのだ。そしてサンズの二ゴロで2点目だ。

我々メディアや虎党はチームが苦戦すると「何か策を打て」と言う。だが「策がはまる」ことは簡単ではない。この日のようにすぐ結果が出ればいいが、いつもうまくはいかない。そうなると「何をやってもダメ」などという話にもなる。厳しいがそんな世間を相手に選手の状態を見極め、起用、采配する、そのすべてが指揮官・矢野燿大の仕事なのだ。

この日は策が奏功して、クリーンアップ3人が12打数無安打でも勝てた。中田翔に一発が出た巨人も東京ドームで3連敗は免れたものの引き分け。「勝ち方としてはもっといい勝ち方をしないとダメだから」…。矢野は振り返ってそう話したが、残り50試合、のちに効いてくる白星と思いたい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

中日対阪神 7回裏中日無死、木浪のはじいたボールを見たビシエドは二塁を狙うも佐藤輝の好返球でタッチアウト(撮影・上田博志)
中日対阪神 7回裏中日無死、木浪のはじいたボールを見たビシエドは二塁を狙うも佐藤輝の好返球でタッチアウト(撮影・上田博志)