政治の世界は自民党の総裁選で大騒ぎだ。立候補している面々はそれぞれポリシーがあるのだろうが、何というか「○○大臣」より、やはり「総理大臣」になりたい欲望があるのかな、などと勝手に想像する。

「肩書」にこだわるのは組織、会社でも同じかもしれない。若い頃は「出世なんて」と興味を持たない人でも年を取るにつれ、妙に気になってくるものではないか。同期が先に係長だとか課長だとかになると妙な気持ちにもなるはず。

「編集委員」などと新聞社にしかないような謎の? 肩書をいただいている当方としてもその雰囲気は分かるつもりだ。肩書より何をやるか、やれるかが大事ということもだけど。

前置きが長い。本塁打にも「肩書」があるという話だ。野球好きならご存じだろう。「社長本塁打」とか「部長本塁打」とかがあるわけではない。

「サヨナラ」「逆転」「勝ち越し」「同点」「先制」という見出しが付く本塁打のことだ。会社の役職と違って? この世界では肩書付き本塁打は、そうでない本塁打より確実に値打ちがある。大差で勝っている展開、あるいは負けている場面で飛び出す1発より「肩書付き」本塁打が価値があるのは当然だ。

そして阪神である。この肩書付き本塁打を今季ここまでもっとも打っている猛虎戦士は誰でしょうか? 答えは佐藤輝明とマルテで「8本」だ。だがそこに猛然と迫ってきた男がいる。そう、大山悠輔だ。

6回に貴重な勝ち越し16号2ラン。4日巨人戦でのサヨナラ15号2ランに続いての肩書本塁打で、これが「7本目」。苦しんできたが、いよいよゾーンに入ってきたか。お立ち台では「結果として勝ちにつながる本塁打になった」と言ったが「結果として」でなく、自分の一撃で勝利をもぎ取る気迫を持ってほしい。既に持っているだろうけど。

佐藤輝は23本塁打中の「8本」。マルテは大山と同じ16本での「8本」。「肩書本塁打」の確率で言えばマルテに並ぶところまで来た。大山にはチームの「肩書本塁打王」を目指してほしいものだ。佐藤輝もこのまま黙っているとは思わない。それこそ指揮官・矢野燿大の言う競争だろう。今季の残り試合から来季の「主砲」争いのテーマとして“ここぞの1発”にも注目したい。その競争の先に「優勝」という2文字もあるはずだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)