「94年の“10・8決戦”みたいになるかもしれません。今年は最後の最後までわからない」。巨人の終身名誉監督、ミスタープロ野球・長嶋茂雄が前カードの巨人戦で東京ドームを訪れてコメントしていた。

「10・8」。ナゴヤ球場に中日担当の手伝いで出かけ、ドキドキしながらゲームを見ていたことを思い出す。壮絶な試合展開はプロ野球の面白さをあらためて思い知らせる試合だった。

ミスターのコメントは巨人に向けて出されたもの。その巨人はこの日も負けて苦しくなってきた。しかし首位ヤクルト、追う阪神の立場にすればまさにそんな感じになるかもしれない。

次回、この2球団が対決するのはまさに「10・8」。10月8日からの神宮球場3連戦だ。そこが正念場になるというのが大方の予想だろう。それは間違っていないと思う。

だが言えることは「10・8は急に来ない」ということだ。約10日間、両軍ともに試合がある。特に追う阪神は頑張らないとそんなことを言っている場合ではなくなる。引き分けがカギになる今季、そこで苦戦する阪神だ。この3連戦で阪神3連敗、ヤクルト3連勝などの結果次第でヤクルトにVマジックが出るという。

巨人に2勝1分けで浮かれていたら、いきなり追い込まれとるやないか、どないなっとんねん、そんな状況になる可能性も否定できないのだ。今月上旬の巨人3連戦をやはり2勝1分けで乗り切った後の7日ヤクルト戦。「0-12」とボコボコにされ「巨人戦後の燃え尽き症候群復活か」と書いた。ゲーム展開は違うけれど見せ場なしの敗戦が同じなのは悲しい。

とにかく目の前のプレーをきっちりやってほしい。失策が多いのはチームの課題で今更言いたくないけれど、そろそろ落ち着いて…と感じて仕方がない。

作戦面でもベンチの意図を感じたかった。8回、無死の走者に代走・熊谷敬宥を送った。だが何も仕掛けないうちに近本光司が併殺打。広島菊池涼介の好プレーもあったが、熊谷はスタートを切っていなかったし、何というか、チームで攻めていく様子を見せてほしいと思った。

全部は勝てない。やれないことはやれない。しかし、やれることはキッチリやる。今こそそれが大事だろう。選手も首脳陣も分かりきっているはず。ある意味、重要なのは「10・8」までの8試合だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)