関東遠征が始まった。毎年、キンモクセイの香りが流れ、秋の気配が漂い出すこの頃。虎党にとってはつらい季節である。03年、05年以外は常に“V逸”気分に陥るからだ。最初からダメなときは当然、シーズン途中は頑張っているときもこの時期、失速する。

地力がないのが最大の理由だ。それでも思うのは“セ・リーグ球団本拠地の有利不利”かもしれない。そらあ、疲れもたまってくるやろ…という話である。

阪神が横浜で戦っている頃、ヤクルトは神宮で巨人戦。巨人は前カードが本拠地でのDeNA戦だったが同じ東京である。なにしろ巨人、ヤクルト、そしてDeNAの選手は本拠地以外で2つの球場に自宅から通える。今に始まったことではないが、これは利点だろう。以前は「在京セ球団」とアマ選手、あるいはFA取得選手の間であこがれのように言われたものだ。

対して阪神、広島、そして中日は本拠地以外はすべて新幹線での移動が伴う遠征。中日は位置的にまだマシかもしれない。厳しいのは広島だ。遠征先で一番近い阪神でも新幹線で約1時間半。遠征先は夜の街でリフレッシュできるのでは…という面も否定はしないが、この異例の2シーズンはビジターでの不自由さが続いている。

繰り返すが、今更、言うまでもないことだ。プロはそんなことを言い訳にはしない。それでも歴史的に巨人が強かったりしたのはその部分とも無縁ではないのでは、と思ったりする。その意味で緒方孝市(日刊スポーツ評論家)が率いた広島が、セ・リーグでは巨人以外未経験だった「3連覇」を達成したのは偉業としか言いようがない。

そして今季は、その“不利組”の中で阪神が唯一、踏ん張っている。前半戦はぶっちぎりだったが甘くない。現在は2位。それでもこの状況下で巨人、そしてヤクルトと「東京の球団」相手に奮闘を続けている。

佐藤輝明、大山悠輔、青柳晃洋と打つべき人、投げるべき人が働いた。中押し、ダメ押しはなく圧勝の気配ではなかったけれど、とにかく初戦に勝った。

「自分たちを乗せていける1勝にしたい」。指揮官・矢野燿大もそう言った。16年ぶりの悲願へ。ここは何としても望みをつないで、この遠征から元気に戻ってきてほしい。しんどいやろうけど、頑張れ。ガラではないけれど、そう思っている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

DeNA対阪神 力投する阪神先発の青柳(撮影・江口和貴)
DeNA対阪神 力投する阪神先発の青柳(撮影・江口和貴)
3回表阪神2死、大山は右越え本塁打を放ち、メダルを胸にエアタッチ(撮影・加藤哉)
3回表阪神2死、大山は右越え本塁打を放ち、メダルを胸にエアタッチ(撮影・加藤哉)