22日は闘将・星野仙一の誕生日だ。1947年(昭22)生まれ。生きていれば75歳になっていた。いわゆる「団塊の世代」の一員だ。戦争が終わり、第1次ベビーブームが起きた47年から49年に生まれた人々をそう呼ぶ。他の世代と比べ、人数が多いことが大きな特徴とされる。

「オレたちの時代は常に競争、競争だったな」。星野がそう口にするのを聞いたことがある。人数が多いということは、どんな場面でも厳しい競争が繰り広げられるのと同じ意味なのかもしれない。

あれは14年の冬、楽天の監督を退き、同球団のフロントに就任するまでの短い期間だったか。久しぶりにゆっくり話す機会に恵まれた。03年の阪神優勝時の虎番キャップだったので当時は連日のように話したが、それからは電話での会話が主だった。

ともに酒が飲めない。「お前はいつも電話で、ノーギャラですませるからな」。そう笑われながらコーヒー、紅茶をお代わりしつつ、いろいろ話をした。そこで、何の気なしにこんなことを口にした。

「カントクは日本一にもなられたけどボクは相変わらずです。全然、出世とかしませんわ」。それを聞いた星野はニヤリと笑みを浮かべ、言った。「出世なんてしなくてエエんや。でもな。存在感は出さなあかんぞ。存在感や」。

妙に響いた。「頑張って出世せんか!」などと言われるかなと予想していたので、拍子抜けし、記憶に残っている。

存在感。自分で出そうと思って出せるものではない。そう実感しつつ、今できることを精いっぱいやるしかないですよね、カントク…などと心の中でつぶやき、毎日を過ごしている。

星野に縁が深かった矢野燿大が阪神の指揮を執って4年目のキャンプがもうすぐ始まる。批判もあるが矢野も懸命に自分のスタイルを出そうとしている。選手も同じだろう。例えば4番争い。現状なら大山悠輔と佐藤輝明の争いか。当然、必死で競争してほしい。

そこに加わる存在も出てきてほしいし、さらに競争に入れない打者にも働き場はある。どこで自分を生かすか。懸命に模索することが存在感を出すことにつながるのではないか。脇役でもキラリと光る選手がもっと出てきてほしい。星野もきっとそう言うはずだ。お茶を飲んだあの日を思い出し、そう考えている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)