オープン戦でも、こんな試合は精神衛生上、よろしい。期待の佐藤輝明が3安打。先発・西勇輝もそこそこ安定していた。左翼争いのロハスも江越大賀も打ったし。梅野隆太郎はバズーカも見せたし、小幡竜平にいい守備も出たし。その結果が10-3の快勝だ。

公式戦なら虎党にとって文句なし。夏場のナイトゲームならビール片手にワイワイ…という感じか。もっともこの日は平日デーゲーム。おまけにこの季節、まだ冷える甲子園とあって観客は上限の2万人に遠く届かない8953人だった。最近は人気カードになったTC戦だが、さすがにそんなものだろう。

そこで気になるニュースが日刊スポーツに載っていたのを思い出す。プロ野球コミッショナー・斉藤惇が「今季は入場制限なく観客を受け入れて開幕したい」と考えを示したというものだ。

「マスク、ワクチン、検査、この3つをやるしかない。これをしっかりやれば、後は社会的対応を拡大しないといけないという考えを持っている。できれば制限なく観客を招いてスタートしたい」。7日に行われたJリーグとの新型コロナウイルス対策連絡会議。今後の検査体制などを話し合った後、25日の開幕に向け、そう話したという。

本当にそういう運びになれば、野球ファンにはやっぱりうれしいことだろう。テレビ観戦もいいが、球場に足を運び、生のプレーに一喜一憂するのは経験した人にしか分からない喜び。さらに言えば、その中でも甲子園は独特である。

「外野で守っていると頭がしびれてきますから。ライトスタンドからのあの声援というか、応援は。阪神の選手はあれをプレッシャーと感じるか。力にできるか。そこが大事」。常々、そう話すのは広島3連覇監督の緒方孝市(日刊スポーツ評論家)だ。現役時代、阪神戦の思い出を聞くとそう言う。その緒方は2年目以降の若手についても以前から気に掛けている。

コロナ禍の20、21年は非常モード。つまり佐藤輝、伊藤将司、さらに中野拓夢といった面々は“本当の甲子園”を未経験だ。入場制限が解除された満員の球場で若手選手がどう反応するかは1つの注目点だろう。

いずれにしてもコロナも戦争の問題も終わって、思い切り野球を楽しめる状況を迎えたい。そんな気持ちを持ちながら、開幕を待っている。(敬称略)

19年9月、ジェット風船を飛ばして盛り上がる甲子園の阪神ファン
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