広島から東京はセ・リーグの本拠地間でもっとも長い移動距離だ。新幹線のぞみ号で約4時間。チームが好調なら音楽を聴いたり、ゲームをしたり、あるいは夢を見ながら居眠りか。それなりにいい時間だろう。しかし「開幕6連敗」の翌朝ではきついのだ。

高校野球なら“善戦”という結果だろうがプロは勝ってこそだ。先発秋山拓巳は序盤から懸命に投げたし、打線も7回まで毎回安打。坂本誠志郎と併用されている捕手・梅野隆太郎は奮起の猛打賞だ。先制したし、中押しもした。2番手以降の投手が6試合目で初めて無失点。必死になっている要素はいろいろあったが勝てない。勝利の女神に見捨てられた6連敗だ。

「みんな、なんとかしようという気持ちでやってくれているのはオレは分かるし。でもプロである以上、結果がこれでは“よかった”ということにはならないので。自分で流れを変える努力を明日以降もなんとかしないと、と思います」

4年目の今季で監督生活にケジメをつけると公言してシーズンに臨んだ指揮官・矢野燿大。まさかのスタートに連日、同じようなセリフを繰り返すしかなくなってきた。このまま終わるとは思わないけれど、それにしても苦しい。

勝つためには運もツキも必要だが、それもあまり阪神には向いていない様子。こういうときにほしいのは…。プロ野球ファンならすぐ分かる。そう、本塁打だ。佐藤輝明も大山悠輔も3割を打っているがまだアーチがない。阪神はこの6試合で2本塁打とリーグ5位だ。大阪桐蔭はセンバツ4試合で11本塁打したが、この際、それは関係ない。

本塁打のリーグワーストは…と言えば、これが広島の「1本」。それで開幕6連勝。不思議な話ではあるが、現状、広島はリーグ・トップの打率をマーク、機動力も利いているので、とりあえず本塁打はなくてもいいのかも。

でも阪神には必要だ。特に佐藤輝に1発が出れば一気にムードが変わるし、チームも乗ってくるはず。多分。そして次は本塁打に恵まれやすい東京ドームでの3連戦だ。もちろん相手は勝てば勢いのつく“エネルギー源”巨人戦である。ここはドドンと反撃の花火を打ち上げ、モヤモヤを吹き飛ばして…。6連敗にもうろうとした頭で考える。1日の先発は誰だ。こちらは藤浪晋太郎。相手は。菅野智之か。う~む。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

広島対阪神 4回表阪神2死、大山は左前打を放つ(撮影・加藤孝規)
広島対阪神 4回表阪神2死、大山は左前打を放つ(撮影・加藤孝規)