そう言っては失礼千万だが、あの場面、小野寺暖に本塁打が出ると予想した虎党がどれだけいただろう。見逃し、空振りと2球で簡単に追い込まれた。三振か。食らいついて適時打といかんかな-。そう思っていたらドカン。今季ここまででも驚いた瞬間だ。

それでも勝てない。いかに「勝利の神様」に見放されているかの象徴だろう。そこは虎番記者の記事でたっぷり読んでいただければいいが、念のため書くと阪神で代打満塁弾が出たのはこれが17度目。そして「過去16度はすべて勝利」と試合中に記録部から聞いた。

おいおい。あかんがな。いまの阪神に接しているとそういう情報は反対に働く。そうか。では勝てるか。そうはならず、これで負けたらいよいよやん…となるのだ。はたして負けた。言葉もない。

だけど少しだけ冷静に考える。一般的に「代打満塁弾」というのは終盤、あるいはそこ近くに出るものだろう。実際17本のうち、4回以前に出たのはこれが4本目という。だから負けてもな-とは口が裂けても言えないが、あの1本で悪い流れを変えるまでには至らなかったということか。小野寺のためにも勝ちたかったと強く思うけれど。

それにしても若い力の活躍だ。待っていたぞ、もう1発いけ…と思っていたら9番の打順に2番手投手の馬場皐輔が入る。正直、あれ? と思った。序盤、代打で出した若手がめざましい活躍を見せれば、そのまま守らせてもよかったのでは、と思う。

小野寺は一塁もできるがメインは外野手。代わるとして誰だ。近本光司、佐藤輝明はない。大山悠輔も調子が悪いが、やはりここはベテランの糸井嘉男か。2打席無安打。今季は働いているが、ここは休んでもらって…。勝手に考えていたがそうはならなかった。

誰よりも苦しい指揮官・矢野燿大にいろいろ注文をつけるのは心苦しいのだけれど雰囲気、ムードを上げていく起用をしてほしいというのはずっと言っていることだ。矢野自身「ムードも上がる1本やったんで」と言っているし、ここは小野寺に次の打席を…という気はした。

ちなみに91年6月14日の中日戦で3回に代打満塁弾を放った真弓明信(日刊スポーツ評論家)はそのまま右翼の守備につき、5回の打席でもソロ本塁打をマーク。もちろん試合にも勝っている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)