プロ初完投に初本塁打のおまけとは。「振ったら入ってビックリしました!」。談話も純粋だったし、ヒーローは西純矢だ。

それをアシストした打線もクリーンアップの本塁打そろい踏み。今季、下を向きがちな虎党にとってはスカッとする試合である。

そんな快勝にケチをつける気はないのだが、首位ヤクルトからすれば、さほどこたえる1敗ではないと思う。先発・高橋奎二の制球が甘く3回までに3被弾。失策も出たし、初対戦の西純も打てず、敵将の高津臣吾にすれば「そら勝てんわ」という試合だろう。

ハッキリ言えば“大味”なのだ。6回までの7得点はすべて本塁打によるもの。長打が出たのはいいが、なんというか相手を追い込んでいく“しつこさ”のようなものは感じなかった。ベンチの采配が不要な展開だったとも言える。

大味に見える理由の1つは抜てきされた選手が機能しない部分にもあるのかもしれない。この日、陽川尚将が「7番右翼」で今季初スタメン出場。相手先発が左腕で、糸井嘉男に代わり出番をもらったのだ。しかし結果は3三振。途中で高山俊に代わった。

今季の阪神、同様の場面が目立つ。高山もスタメン4試合では打率1割6分7厘。現在1軍にいるメンバーでは熊谷敬宥が同6試合で1割1分1厘、島田海吏が同4試合で1割4分3厘、さらに北條史也が同1試合で打率なし。もらった好機を生かせない状況だ。

いつも出ている面々でもなかなか打てないのに、たまに出て簡単にはいかない-というのも理解できるが、それではいつまでも底上げはできない。指揮官の矢野燿大が言ってきた“競争”にはならないのだ。

どうすればいいのか。1つの答えは中野拓夢が見せていたと思う。3回、1死走者なしから実に13球を投げさせて四球を選んだ。これがなければ大山悠輔の3ランは出ていない。あるいは代打で出た北條のように球に食らいつく姿勢もヒントだろう。大きいのを…と思うより、たまに出る選手こそ粘りの感覚がより必要なはずだ。

最下位に沈むチームも同じだ。大事なのは3戦目。ここを取ればヤクルトも少しイヤだろうし、阪神にとっても2カード連続勝ち越しで甲子園の巨人戦に臨める。「4発で快勝や!」の浮かれ気分は日付が変わった時点で終わりにしなければならない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 2回表阪神2死一塁、左越えに2点本塁打を放ち、ナインに迎えられる西純(撮影・菅敏)
ヤクルト対阪神 2回表阪神2死一塁、左越えに2点本塁打を放ち、ナインに迎えられる西純(撮影・菅敏)
ヤクルト対阪神 プロ初完投を飾り、笑顔でナインとタッチする阪神西純(中央右)(撮影・菅敏)
ヤクルト対阪神 プロ初完投を飾り、笑顔でナインとタッチする阪神西純(中央右)(撮影・菅敏)
ヤクルト対阪神 西純は初完投のウイニングボールを右手に、初本塁打の記念ボールを左手に持って笑顔を見せる(撮影・加藤哉)
ヤクルト対阪神 西純は初完投のウイニングボールを右手に、初本塁打の記念ボールを左手に持って笑顔を見せる(撮影・加藤哉)
ヤクルト対阪神 7回表阪神2死一塁、左二塁打を放つ中野(撮影・菅敏)
ヤクルト対阪神 7回表阪神2死一塁、左二塁打を放つ中野(撮影・菅敏)