指揮官・岡田彰布はいかにもつまらんという表情だった。「負けるよ、そら。相手のあることやのに」。ときにはそう言い切る勝負師としては引き分けが一番、面白くないのか。

ロッテと引き分け、あいさつを終え厳しい表情を見せる阪神岡田監督(撮影・前岡正明)
ロッテと引き分け、あいさつを終え厳しい表情を見せる阪神岡田監督(撮影・前岡正明)

この日は雨天中止になった2日の予備日。月曜のナイトゲームとくれば、普通はスタンドは空席が目立つもの。だが甲子園に詰めかけた観衆は3万6780人。今季最少とはいえ、他球場に比べれば、相当な数字である。

「ウチのこれまでと比べても多いですね。チケットの販売期間も3日間しかないですから」。営業関係者もそう話す。その前で5時間7分、今季両リーグのロンゲストゲームときた。今季の阪神、何かと目立つ存在である。

もちろん背景にはあるのはチームの好調さだろう。引き分けは面白くないけれどパ・リーグで首位争いを続けるロッテ相手に2勝1分けの結果は十分、合格点ではないか。

この試合では久しぶりにクリーンアップがそろい踏みした。3回にノイジーが適時打、4回に佐藤輝明が三塁打。そして5回に大山悠輔が一時は逆転とする7号3ランを放った。

3人がそろって安打を放つのは5月25日ヤクルト戦(神宮)以来だ。そのゲームは4回に大山が5号ソロを放つと佐藤輝が左前打。ノイジーは延長10回に右前打を放っていた。それ以来、9試合ぶりの「そろい踏み」である。

見方を変えれば、3人がそろって打たない試合が8試合続いたことになる。だが、その間、チームは6勝2敗と好調だった。言うまでもなく、1番・近本光司、2番・中野拓夢、8番・木浪聖也というレギュラーが踏ん張っているからだ。

7回表ロッテ1死一、二塁、山口に左中間へ逆転の3点本塁打を打たれしゃがみ込む阪神浜地(撮影・前岡正明)
7回表ロッテ1死一、二塁、山口に左中間へ逆転の3点本塁打を打たれしゃがみ込む阪神浜地(撮影・前岡正明)

そして何より投手陣の頑張りがある。今季の阪神はズバリ言って打線のチームではない。チーム打率はリーグ3位なのに比べ、防御率はトップ。岡田の理想とする「守りの野球」ができている結果だろう。

だが逆に言えばこの日のように先発、中継ぎが四球絡みで失点すれば打線が返しても勝ちきれないのも事実。これまではそういう試合がほとんどなかっただけに指揮官は機嫌が悪い。

「四球、多かったのお。ビッグイニングになるからの。そういうことやん」。決めゼリフ「そういうことやん」も飛び出した。このドローで切り替え「成功パターン」で交流戦の残りを戦いたいところだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

7回、浜地の交代を告げベンチに戻る阪神岡田監督(撮影・前岡正明)
7回、浜地の交代を告げベンチに戻る阪神岡田監督(撮影・前岡正明)