あまり見たことのない試合展開だ。雨で午後2時の開始予定を1時間遅らせ、途中に1時間1分の中断を挟んでの熱戦。結果は地力で勝る阪神が終盤の9回、延長10回で逆転勝利を収めた。阪神は開幕から3カード連続勝ち越しだ。
広島を得意とする大竹耕太郎が打たれるなど、いろいろな局面から、野球は何が起こるか分からない…ということを再認識させられたゲームだった。その中で「さらにチームを勢いづかせるかも」と感じさせたことがある。地味だが福島圭音の様子について、だ。
3月30日、育成選手から支配下登録されたばかりの福島。プロ初スタメンとなった前日3日は初安打となる二塁打を放っていた。この日も「8番左翼」で2試合連続スタメン。4打数無安打だったがキラリと光るプレーがあった。
3点を追う9回無死一、二塁で福島は森浦大輔から死球を受け、出塁する。ここから1点をかえし、なお2死二、三塁となった場面だ。ここで中野拓夢が左前打へ流し打ち。浅い打球だったが二走だった福島は果敢に走り、本塁にヘッドスライディングで生還した。
当然ホームを狙う場面、そして俊足の福島とはいえ、きわどいタイミングのクロスプレー。捕手・石原貴規は一瞬、不服そうな表情を浮かべたが敵将・新井貴浩からリクエストの要求は出なかった。これで同点となり、延長10回、木浪聖也の1号2ランによる勝ち越しにつながっていく。
「いいな」と思ったのは福島が死球を受けた際、手をたたき、感情を出していたことだ。高校野球なら死球で喜ぶ場面はあるがプロならよほどのケースでないと見かけない気はする。それだけ彼の必死さが伝わってくるのだ。
そんな状況をつくっているのが指揮官・藤川球児かもしれない。高寺望夢ら競争相手もいるのだから、福島だけにこだわらなくてもいいとも思うが、まずは勢いを買っている様子。虎番キャップたちの取材にこんな話をした。
「チームが1つになってスタートができている証しかなと。本当に今、チームに乗ろうとしている選手もいますし、またここから戻ってくる選手もいる。今いるメンバーはいい状態でやってくれている」
スタメン全員が好調というワケではないが、その中でこの勝ちっぷり。阪神が1つになって戦っていることは間違いない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




