「初夢っていうのかな。今年は大きな希望の年になるよね。夏、初めて福岡から2校が甲子園に出られるのですから」

 福岡県高校野球連盟の野口敦弘理事長(56)は、忙しくなる福岡高校野球のスタートに、腕まくりをしている。

 2018年夏、甲子園は第100回全国高校野球選手権記念大会として史上最多の56校が出場する。昨年4月「夏の記念大会は、福岡から2校出場」のニュースが発表され野口理事長は「長年の夢がやっとかなった」と心から喜んだ。136校が参加する福岡大会は、南福岡(70校)、北福岡(66校)に分かれ、2つの頂点を目指す夏となる。ちなみに、2代表制は、通年の北海道、東京に加えて、記念大会(80回、90回)の埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪、兵庫のみ。これまで「次点」だった福岡が、100回の大きな節目にようやく仲間入りができたということになる。


■南北の色分けが濃い福岡


 福岡の高校野球は少し特徴的だ。もともと南北に分かれて県大会1~4回戦を行うシステムがあり、南と北の色分けが濃い。ベスト16に南北8校がそろうバランス性を持ち、決勝戦の球場も南と北で隔年交互に行う。この地域性について野口理事長は「100万級の都市が福岡と北九州と2つあり、NHKと朝日新聞の“本社”が2つある珍しい県。高校野球も南と北で尊重、刺激し合って盛り上がっている。これが福岡の魅力なんです」と説明する。近年は九州国際大付の夏3連覇(2014-16)に代表されるように北部の隆盛が目立ち、今春のセンバツ出場濃厚な東筑(北部)も創部初の夏春の2季連続出場を掴もうとしている。昨春のセンバツでは東海大福岡(北部)と福岡大大濠(南部)がベスト8入りし、県民ファンに大きな感動をもたらした。

「夏の甲子園決勝は福岡の2校が対戦して欲しい。…なんてね。そんな大きな夢を私自身も描いています」(野口理事長)。


■始球式は「福岡を代表する偉人に」


 福岡ソフトバンクホークスV奪回で盛り上がる福岡は、「のぼせもん」(夢中になりやすい)の気質も手伝って野球熱の高い地域だ。ここ10年のプロ野球選手輩出数「56」は、神奈川(62)、大阪(58)に次いで全国3位という誇らしい数字。しかし高校野球の全国制覇は1992年の西日本短大付以来、25年も遠ざかっている。県高野連としては今夏、南北合同で行う開会式を高校球児の憧れである福岡ヤフオクドームでできるよう申請しており、その始球式は「福岡を代表する偉人」にお願いを続けている。キーワードは「先人を敬い、高校球児たちの記憶にずっと残る100回大会」だ。


「今年は優勝旗がもちろん2本。高校球児の夢が2倍にふくらむ夏になる。記念大会で福岡がずっと2代表になれるよう、参加校の数を減らしてはいけないと改めて思いました。その努力も我々がしていかないといけません」。

希望に燃えながらも、野球人口減少という問題に向き合うことを誓う野口理事長。200回大会へバトンを繋ぐ、福岡の「特別な年」が幕開けした。【樫本ゆき】