推薦校として九州大会に出場している東筑が6-3で樟南に勝ち、九州大会2季連続準決勝進出を決めた。1回戦・長崎総合科学大付戦で5安打完封を果たしたエース石田旭昇(3年)を休ませ、この日は林大毅(3年)が登板。樟南を8安打3失点(自責点2)に抑え、青野浩彦監督(57)を喜ばせた。

 「5失点までは我慢しようと思っていたんだけどね。林はよく投げてくれたね」。指揮官の言葉には、名門私学が相手でも6点を取る自信があったことを表している。今大会から4番に座る江藤那央(2年)が、三塁打、二塁打、左前打の活躍。3打席目の二塁打が、一塁ベースの踏み忘れで記録上安打にならなかったが、そのことはしっかりと反省しつつ「自主練で置きティーをしている時から(打球の)音がめちゃめちゃ良かった。調子はいいです」と満面の笑みを見せた。

 センバツでは代打の切り札だったが、今大会は2試合で7打数4安打4打点と絶好調。6番を打つ野口皓生(3年)も「旧4番」の意地を見せて公式戦初ホームランを打ち、チームは長短打合わせて9安打、6得点と効率よく攻めた。


左から東筑の江藤那央、野口皓生。新旧4番コンビの活躍で九州大会準決勝進出
左から東筑の江藤那央、野口皓生。新旧4番コンビの活躍で九州大会準決勝進出

■ユニホーム姿で参考書


 創部初の3季連続甲子園出場を狙う東筑。環境が十分でない進学校の野球部がその偉業を果たすのは簡単なことではないが、選手たちは野望に燃えている。平日の練習後は学習塾に通う選手が多く、文武両道がしたくて入学してきた選手がほとんど。頭にあるのは、夏の甲子園出場、そしてその先の大学受験合格。2つの夢を追いかけることで、高校生活が充実し、人間力が高められる。青野監督からそう指導を受けている。

 九州大会初日、こんな光景があった。開会式を終え、開幕試合を観戦するためにスタンドに陣取った東筑の選手たち。野球バックから何か本を取り出し、読みふけっていた。手にしていたのは、なんと参考書。古文単語の暗記をしていたのだ。その様子を見ていた延岡学園のある選手は「信じられません!」と目を丸くしていたが、選手に聞くと「こういう空いた時間は、暗記の勉強をするのがいいんです」、「通学の電車内でも、英単語を覚えたりしています」とサラリ。スタンドで試合を見ながら暗記ができるのか疑問に思ったが、彼らにとっては習慣のひとつなのだとか。もちろん、指導者がそうしなさいと指示したわけではなく、皆が自主的にそうしているのだ。

 毎日、課題や試験勉強に追われる選手たちは「野球が1番の息抜き」と口をそろえる。ホームランを打った野口選手は「青野先生から『春の九州大会は付録みたいなものだから、楽しんでやれ』と言われています。はい、楽しんでいます!」と目を輝かせた。

 1日空いて、準決勝はあさって25日。打撃の精度を高めたいところだが、青野監督は「明日は火曜日でグラウンドが全面使えない。打撃練習ができないんですよ。仕方ないですねぇ。アハハ」と気にしていない。環境を言い訳にせず、強豪私学とは違う手法でトーナメント戦を登っていく選手たち。付録を開けるときのようなワクワク感で「あと2つ」を勝ちきる。【樫本ゆき】