一関工の4番小野寺将外野手(3年)が「兄弟リベンジ」に成功した。4年前の夏の3回戦で一関一の兄涼さん(22=公務員)が敗れ、昨夏は一関工が準々決勝で苦杯をなめた盛岡三に、8回コールド13-5と圧勝。5-2の4回2死三塁では左越えに2点本塁打を放り込むなど、第5シードを相手に4安打と活躍。チームを16強に導いた。

 東京で働く兄への思いを込めた打球が、左翼スタンドに吸い込まれた。4回、小野寺将が差を7点に広げる高校通算7号、公式戦第1号。盛岡三との昨夏準々決勝は、3番打者で出場して1-6と敗退した。「ここは1つの照準でした」。リベンジを果たす大きな1発だった。

 大会前に涼さんから激励され、雪辱を託された。「今まで泣いた姿を見たことのない兄が泣いたのが、夏に負けた時でした」。4年前、兄が着た一関一のユニホームをベンチに置いた。それを見て自らを奮い立たせた。地元・一関市の花泉小3年で野球を始めたのも兄の影響。本塁打は投手が2番手に代わった直後だった。「ストレートの配球だと思った」。2球目の真ん中高めの速球をフルスイングした。

 もう1人、勝利を届けたい人がいた。脳出血のため、昨夏は指揮を執れなかった高見延也監督(45)だ。この夏はベンチに入り「迷いなくスイングしてくれた。流れを大きく引き寄せてくれた」と、小野寺将の1発を喜んだ。本塁打後の6回の第4打席では、先頭打者で三塁へのセーフティーバントを決め、4番でも後ろへつないだ。4安打は大技、小技をフルに使った。

 盛岡三への「兄弟リベンジ」に成功して、高見監督へはこの夏2勝をプレゼント。「監督さんのためにも、自分の目指す甲子園に連れて行きたい」と言葉に力を込めた。シード校を撃破して、その夢に1歩近づいた。【久野朗】

 ◆小野寺将(おのでら・しょう)1998年(平10)3月25日、岩手県一関市生まれ。花泉小3年の時、花泉スポーツ少年で野球を始め投手と外野手。花泉中では軟式野球部。一関工では1年夏からベンチ入りし、その秋に公式戦初出場。177センチ、88キロ。右投げ右打ち。家族は両親、姉、兄2人と弟。