【2015白球メモリー:専大北上・犬飼啓太投手(3年)】

 リベンジに失敗しても、すがすがしかった。「全力を出し切った。胸を張って帰りたい」。2年春から背番号1を背負った右腕は昨夏、花巻東との準決勝に先発して3回4失点で敗戦投手になった。1年後、くしくも準決勝で宿敵と当たった。

 1点リードされた4回1死三塁から、2番手でマウンドに上がった。初球をいきなりスクイズされた。5回には、決め球のスライダーを3点三塁打された。「全力で投げたボール。相手の方が素直に力が上だったので。悔いはない」。強がりではない。少し大人になった犬飼が、そこにいた。

 名門・仙台育英に近い宮城・多賀城二中出身。「甘えが出てしまう」と、あえて親元を離れて専大北上で寮生活を送った。「洗濯とか自分でやりましたから。1歩大人に近づけたのかな」と照れた。人として-。高校で成長したのは野球だけではなかった。【久野朗】