大体大浪商が大産大付に逆転勝ちし、5年ぶりに決勝に進出した。かつて浪商時代に怪童・尾崎行雄、牛島和彦-香川伸行のバッテリーら大阪を代表する名選手を生んだ古豪が36年ぶりの夏の甲子園を目指す。

 「みんな、このままでいいんか!」。大体大浪商ダッグアウト前で、監督と選手たちの声が入り交じった。胸に「NAMISHO」のユニホームが、それぞれの息づかいに合わせて躍り始めた。

 4回までに2点を許した。先制されるのは今夏6試合目で初めての経験。主将の津田椋哉二塁手(3年)は「先制されて下を向きかけていたところを、あの回(5回)は気持ちを入れ直して攻撃に臨めました」と振り返る。2点を追う2死一、二塁から素川集中堅手(3年)の中前打で1点。さらに2死二、三塁として岩崎将遊撃手(2年)が中前へ逆転2点打を放ち3-2。大産大付に毎回安打を許しながらも逃げ切った。

 前日28日にはPL学園に2-1で競り勝っていた。甲子園にあと2勝。「こんなチャンスはめったにない。欲を持ってやろうや」と四田勝康監督(58)が試合前に鼓舞、し、10年に履正社に0-3で敗れて以来の大阪決勝の舞台をつかんだ。その前年の09年にアスリートコースを設置した大体大浪商は、新たな力強さを身につけてここまで来た。

 かつて「浪商」が試合をすれば、森ノ宮の日生球場は満員になった。時は流れ、昨年は6月に金藤晃裕元監督が55歳で、9月には「ドカベン香川」が52歳で死去した。「私より若いOBが亡くなるのは、つらいです」。四田監督は、伝統を築いた歴代選手たちの“甲子園で再会するぞ”の声を、心の中で聞いている。

 牛島-香川の黄金バッテリーで全国を熱狂させた1979年以来36年ぶりの夏の甲子園へ、あと1勝はスタンドを含めたオール浪商で奪いに行く。【宇佐見英治】

<大体大浪商アラカルト>

 ◆大阪決勝24回目 大体大浪商の大阪大会決勝進出は5年ぶり24回目。過去13度優勝。1930年~41年の12年間は9回決勝進出し3度優勝。戦争で中断後の46、47年に連続優勝。

 ◆夏V2度 46、61年夏の甲子園優勝。79年には牛島-香川のバッテリーで4強入り。

 ◆近年の大阪上位進出 14年準々決勝でPL学園に1-9。12年準決勝、11年5回戦(16強)、10年決勝では3年連続で履正社に屈した。

 ◆大体大浪商OBの主な現役プロ選手 阪神高宮和也投手は徳山大-ホンダ鈴鹿を経て05年大学生・社会人ドラフト希望枠で横浜入団。楽天の育成枠、宮川将投手は大体大から12年育成選手ドラフト1位。村田透投手は大体大3年時の06年全日本大学野球選手権優勝。07年ドラフト1位で巨人入団。その後インディアンスで、今年6月28日にメジャーデビューした。