みちのくのドクターK、秋田商の「石川2世」成田翔(かける=3年)が力尽きた。仙台育英(宮城)との東北対決に敗れ、初の夏4強入りを逃した。4回2死までパーフェクトを続けていた左腕は、続くプロ注目の相手3番平沢大河内野手(3年)に本塁打を浴びた。5回に3点を許し6回途中で降板。8回から再登板して、9回にも1点を失った。ベスト4には届かなかったが、初戦の2回戦で16奪三振など全国にその名を知らしめた。

 成田翔の目が真っ赤になっていた。「相手の方が上。打たれて悔しい」。3試合連続2桁安打と強打の仙台育英を、みちのくのドクターKでも止められなかった。7回2/3、9安打6失点。三振は7つにとどまった。秋田商初、秋田県勢として89年秋田経法大付(現明桜)以来26年ぶりの4強入りは、何度も練習試合で戦った同じ東北勢に阻まれた。

 前日16日の3回戦は延長10回を完投して161球を投げ抜いた。連投で疲れと左肘に張りもあったが「チームに影響を与える」と、表情にも口にも出さなかった。初回から飛ばして、2回に自己最速に並ぶ144キロを計測。4回2死までパーフェクトに抑え込んだ。

 直後、平沢に高めの速球を右翼ポール際に運ばれた。「力負けした」。5回は4安打1四球で3点を許した。連投の影響か、抜け球や高めに浮くボールが目立った。「多分、力みがあった。疲れとは言いたくない」と少し強がった。

 3万7000人の観衆を沸かせた。右翼の守備に回っていた7回1死三塁。フライを捕球し、レーザービームで三塁走者を本塁で刺して犠飛を阻止。「チームのため投手を助けるため」と降板しても役割に徹した。8回から太田直監督(36)に「全部、三振を取ってこい」と再びマウンドに送り出された。2つ三振を奪った。最後の打者には6球すべて速球で勝負した。

 13年夏、現メンバーでただ1人ベンチ入り。敗れた初戦2回戦(対富山第一)に救援で2回を投げた。「1年生の時に負けて、ここで勝つという目標があった」と言った。くしくも2年前と同じ初戦2回戦で、龍谷(佐賀)から16三振を奪って雪辱。実力を全国に強烈にアピールした。

 身長167センチの秋田商OBヤクルト石川と、ほぼ同じ168センチ。「石川さんを超えるような投手になりたい」と夢を口にした。進路は「これからです」と話す小さな大投手は、80年ぶりの8強と道を開いた。3試合432球。最後まで全力投球を貫いた。【久野朗】