仙台育英(宮城)が秋田商との東北対決を制し、準優勝した89年以来26年ぶりに4強入りした。3回まで無安打と秋田商エース左腕成田翔(3年)を打ちあぐねたが、4回にプロ注目の平沢大河内野手(3年)が右翼ポール際に先制ソロホームラン。そこから打線がつながり、11安打6得点で打ち勝った。これで甲子園4戦すべて2ケタ安打。大会一の強力打線をひっさげ、19日の準決勝で早実(西東京)とぶつかる。

 高く舞い上がった平沢の打球が右翼ポール際に吸い込まれる。小雨の中、ダイヤモンドを回り終えると、雨が上がり甲子園に光が差し込んだ。それまでチームは秋田商の左腕成田翔相手にノーヒット。均衡を破る1発だった。狙っていたのはスライダーだったが、内角直球をフルスイングで捉えた。「あれで試合の流れが変わった」と堂々と振り返った。

 初戦の明豊戦で先制2ラン、二塁打を決めて以来、ここ2戦は無安打。それでも「過去は引きずらず、次の試合と思っていた」。目の前の打席、1球に集中した結果が3戦ぶり、甲子園3本目のヒットになった。佐々木順一朗監督(55)は「チームにとって大きかった。今までは自分が思ったようなボールが来ないと、手を出さなかったが、少々違っても振っていた。目覚めてくれたかなと思う」。ふっ切れた平沢のスイングを喜んだ。

 この1発が、打線に火を付けた。5回、先頭の佐々木良介内野手(3年)の右前打を皮切りに、四球をはさんだ4連打で一気に3得点。6、9回にも1点ずつ加え、計11安打でリードを保った。

 これで甲子園4戦すべてチーム2ケタ安打。絶好調の打線の秘密は「食」にある。現ソフトバンク上林を擁した2年前の夏は2回戦敗退。ナインが軒並み体重を減らし、不調になったことが敗因の1つだった。だからこそ今年は佐々木監督が「食べろ」とゲキを飛ばす。「痩せやすい」という平沢は、宿舎近くの牛丼店で毎日「並」を間食し、体重をキープ。宿舎のバイキングでは、おかずの皿が空いたらすかさず替えが出てくるなど協力態勢も整う。青木玲磨外野手(3年)が10キロアップなど、ほぼ全員が大阪入り後に体重増。短期間でさらに付いたパワーが、そのままバッティングに表れている。

 夏26年ぶりの決勝進出をかけ、あす19日に早実とぶつかる。怪物ルーキー清宮幸太郎に注目が集まるが、郡司裕也捕手(3年)は「いい3番ぐらいのつもりで」。平沢も「清宮くん、というよりワセダと戦うイメージ」と意に介さない。郡司は「5点勝負」。打たれても打ち返して勝つ力が、今の仙台育英にはある。

 花巻東、秋田商と東北勢を連破しての4強進出。「今頑張らないでいつ頑張るんだ」と佐々木監督は、唯一残ったチームとしての責任を語った。大旗白河越えまであと2勝。東北の悲願をこの夏こそ、成し遂げる。【高場泉穂】