第88回選抜高校野球大会(3月20日から12日間、甲子園)の出場校が29日、発表され、群馬県からは桐生第一が2年ぶり5度目の出場を決めた。定年を迎えた青柳正志部長(60)は、今大会が最後のベンチ入り。エース内池翔(2年)を中心に攻守でまとまるチームは、感謝の気持ちを上位進出という結果で示す。

 甲子園で部長の花道をつくる。午後3時25分、高山信広校長(66)から出場決定の報告を受けると、一瞬表情を緩めたナインが、すぐに気を引き締めた。高田修平主将(2年)は「甲子園は出たかった夢の舞台。関東、群馬の代表として戦う。特別な思いがある。部長を日本一にしたい。結果で恩返ししたい」と闘志を燃やした。

 福田治男監督(54)は会見で、何よりも先に青柳部長との26年間を思い返した。「部長と二人三脚でやってきた。(春夏通算)13回の甲子園は全部一緒。選抜は2人で試合ができる最後なので、1日、1試合でも長くやりたい」。桐生第一が甲子園に初出場したのは91年の春。青柳部長にとっては、選抜で始まり選抜で終わる甲子園。「生徒が頑張って、花道をつくってくれた。名将福田監督とやらせてもらったのは、いい財産。感謝している」と頭を下げた。

 チーム浮沈の鍵を握るのが、エース内池だ。昨年12月には北関東選抜でオーストラリア遠征にも参加した、最速138キロ左腕。冬場には体づくりのため、毎日毎食2合半の米に麺類、さらに母香さん(40)手作りのタラコおにぎり4個を食べた。わずか2カ月あまりで、体重は67キロから76キロに増量。負荷100キロのスクワットは、最高3回から20回に増えた。「(2学年上の)先輩のベスト8は超えたい」と自信をのぞかせた。

 内池は1年生のころ、青柳部長に迷惑を掛けた反省がある。「(以前は)あまり素行が良くなかった。他のメンバー以上に恩返ししたい」。夏からベンチ入りしながら、自主練習でふざけていた。すると内池の素質を見込んでいた部長から「お前がそうじゃダメ。野球人の前に高校生だ」と1時間以上も説教を受けたという。心を入れ直した後、つかんだエースの座。さまざまな思いを背に、甲子園に向かう。【斎藤直樹】

 ◆桐生第一(きりゅうだいいち)1901年(明34)桐生裁縫専門女学館として創立した私立校。89年から現校名。普通科、調理科があり生徒数は1439人(うち女子594人)。野球部は85年創部。甲子園に春は5度目、夏は9度出場。99年夏は全国優勝。部員数57人。主なOBに正田樹(四国IL・愛媛)藤岡貴裕(ロッテ)ら。所在地は桐生市小曽根1の5。高山信広校長。