春季県大会ベスト4の長岡工の左腕エース黒坂啓太(3年)が、最後の夏で「独り立ち」する。昨秋から右横手の藤塚祥吾(同)との継投を軸に戦ってきたが、夏に向けて完投を目標に据えた。真のエースになって、甲子園を目指す。

 ブルペンに入った黒坂は、1球1球、丁寧に投球練習を行う。右打者の内角を突く直球に、「80%くらい出来上がってきた」というスプリット。躍動感のあるフォームから腕を振り抜く。

 春季県大会のベスト4は「自信より反省が多かった」と言う。4回戦の開志学園、シード順位決定戦の長岡大手戦と初回に失点した。「まだまだだと思った。安定感をつけなければ」。課題の見つかったことが、春の収穫だった。

 渡辺将史監督(39)は「相手の目が慣れてくるとつかまる傾向がある。もっと大胆に投げてほしい」と注文をつける。一昨年の秋から先発黒坂、中盤から藤塚の継投が基本線。黒坂はテンポよく投げているときは、試合をつくることができる。ただ、1度リズムを崩すと流れを引き戻せない癖があった。

 黒坂もそこを「克服しないと」と意識する。今春はシード順位決定戦の長岡大手戦までの7試合中、1回戦から4回戦までと、シード順位決定戦が継投。準々決勝の新津戦と、準決勝の新潟明訓戦の大一番は藤塚が完投した。「藤塚を助けられるようにならなければ」。黒坂は藤塚へのライバル心よりも、チームが勝つための力として自身にも完投能力を求める。

 公式戦では昨春の2、3回戦で7回コールド勝ちを1人で投げ抜いた経験はある。9回完投はまだない。春季大会後、脂質の多い食べ物を控え、ヨーグルトを多く食べるなど体調管理に気を配っている。全長1キロの校舎周辺の周回コースを毎日5周がノルマ。体力アップの感触はある。

 努力の成果を「夏に見せたい」。藤塚との継投、そして場合によっては1人で最後までマウンドに立ち、勝ち進む。その形をつくるための準備を続ける。【斎藤慎一郎】

 ◆黒坂啓太(くろさか・けいた)1998年(平10)1月27日、長岡市生まれ。中島小3年から野球を始める。長岡東中では左翼手と投手。長岡工では1年の秋からベンチ入り。2年の春から背番号1をつける。176センチ、70キロ。左投げ左打ち。血液型B。