迫桜(はくおう)が宮城で最も早く勝利の桜を咲かせた。開会式後の開幕戦に8-5で古川黎明(れいめい)に勝利。練習試合や合同練習を頻繁に行う北部地区同士の一騎打ちは、最終回まで勝敗が見えない熱戦となった。それでも夏の大一番に向け、戦い方を前日に小技中心へと変更。女子マネジャーの握るおにぎりの支えを思い出し、勝利の凱歌(がいか)をあげた。

 最後の最後まで、迫桜に勝利の当確ランプがともらない。9回。2点を奪われ、3点差となった2死一、三塁。佐々木一樹投手(3年)は「バテちゃいましたけど、最後は直球で」と勝負を挑んだ。ライナーは左翼を守る阿部洸太朗主将(3年)のグラブに収まる。マウンド上ではじけたサクラサクの笑顔。「9回で3点以内の目標だったんですけど」と公約未達成だったと頭をかいた。

 やりづらい対立候補だった。同じ北部地区。平井安弘監督(36)も以前は古川黎明に在籍したこともあり「合同練習とか、家族のようにトレーニングしていた」。だが、負ければ終わりの夏。「勝負は勝負」と割り切った。

 コツコツと地盤を固めた。前日9日が雨天中止。他校の室内練習場を借りて打撃練習をすると選手のバントの調子が良かった。この日は序盤からセーフティー、送りバントを多用。3回までに3犠打、内野安打2と揺さぶり7得点した。「着実に1点取ると自信がついて落ち着く」(平井監督)、「雨が降らなかったら打て打ての試合になったかも」(阿部主将)と政策転換が奏功した。

 内助の功もあった。佐々木琉花、鬼頭彩果マネジャー(ともに2年)らのおにぎりだ。具はない。練習後に1人2個食べられるように手のひら大のものを毎日握った。味付けは高級な物ではなく「焼き肉のたれか塩」。冬場には25合の米を炊き牛丼を振る舞うなど、まさに手弁当の戦いで胃袋から支えた。

 選手15人、女子マネ4人の陣営が一体となってつかんだ勝利。秋から練習してきた校歌を胸が反りすぎるほど力を込めて熱唱した。目指すは01年の統合新設以来の最高成績4回戦超えだ。阿部主将は「打も投も強気にどんどんやりたい」と意気込む。ちなみに選挙権を持っているのは「アベシュショウ」だけ。「これから行ってきます」と足取り軽く、18歳の初投票に向かっていった。【島根純】