ポジティブ思考で白星をつかんだ。宮城工が仙台東に8-1で8回コールド勝ちした。9日の開幕式が雨天順延となり、日程が変更。試合会場が憧れのコボスタ宮城でなくなったが、天然芝よりも人工芝の球場の方がミスがなくなると切り替えた。試合前にはグラウンドに全員がダイブし、球場とお友達に。失策をわずか1に抑える堅守で勝ちきった。冬場にアルバイトしたお金を元手に春先には甲子園でセンバツを観戦。前向きなイメージを植え付け、聖地を目指す。

 「グラウンドだーい好き!」。松岡修造氏のように宮城工ナインが唐突に球場へ愛を伝え始めた。試合前のシートノック開始とともに全選手が守備位置にダイブ。中にはゴロゴロと転がり、人工芝に抱かれる。下原良太主将(3年)は「気持ちを作ってノーミスでいけるように試合につなげる」と説明。大内茂樹監督(54)は「県岐阜商さんが甲子園でやっていて、マネしました」と球場と仲良くなることが重要と話した。

 これが、効いた。1回先頭打者の及川悦也内野手(2年)が内野安打で出塁。1死から3番下原、4番讃岐浩哉外野手(3年)の連打と押し出しの四球でいきなり2得点。「気持ちを盛り上げるとスッと試合に入れるんです」(下原)といきなり流れをつかんだ。

 超ポジティブ思考だ。本来ならば前日10日にコボスタ宮城で試合が行われるはずだった。しかし雨天順延の影響で1日ずれ、仙台市民球場に変更。だが「少し悔しかったけど、土でイレギュラーするよりも、人工芝の方がいい」(下原)と切り替えた。加えてエース夏目大成(3年)は3日前から風邪気味だった。休養が取れて「1日ズレたのは大きかった」と恵みの雨を喜んだ。

 心はちょっぴり大人だ。年末、選手には10日間以上のオフが与えられる。その間アルバイトに励む。近くのそば屋、朝市、精米店、レンタカー屋…。センバツの時期に甲子園遠征する費用を稼ぐためだ。汗水流して手に入れた4万5000円で遠征し、甲子園での歓声、芝の匂いを焼き付けた。下原は「僕らは卒業したら就職するのがほとんど。野球のためにお金を稼ぐ大変さも知れる」と話す。

 次戦はシード校の富谷。下原は「目標は甲子園だけど、一戦必勝です」と意気込む。想像できることは、実現できる。常に前向きに勝利へ向かう。【島根純】