エースが、ようやくお目覚めだ。初戦の函館大有斗戦で8安打5失点と苦しんだ札幌第一の上出が、この日は一転、見違えるような投球を見せて散発3安打で無四球完封。生命線の外角低めへ、伸びのある直球主体に13三振を奪い「センバツ以降、一番の投球が出来た」と照れ笑いを浮かべた。

 直球の制球に、絶対の自信があった。1回、外いっぱいを狙った直球がやや内寄りに入り二塁打されたが、好守備に助けられ無失点。2回以降は危なげなく、走者を出した4回は1死二塁から、5回は1死一塁から2者連続三振で切り抜けた。昨秋の全道大会決勝から、対北海道栄は17回連続無失点。春以降、不本意な投球が続いていただけに「今日は指にボールがかかって、投げたいところへ投げられた」と納得顔だ。

 今年のセンバツで初戦敗退したシーンが、頭から離れない。「フルカウントから力勝負じゃなく、変化球でかわしたところを打たれた。後悔しか残らなかった」。だから、最後の夏は力勝負を挑むと決めている。春は取り忘れてしまった甲子園の土。「甲子園の土、欲しいです。意志を持った投球をしていきたい」。道勢10校目の春夏連続甲子園へ、あと2つ。【中島宙恵】