東海大甲府のエース菊地が、「打倒! 早実清宮」の思いを込めて腕を振った。直球は自己最速の146キロに迫る、144キロをマーク。要所でスライダーやチェンジアップを有効に使い、日川打線を寄せ付けず、6安打、無四球完封で7回コールド勝ちだ。「初回からテンポ良く投げられた。(最速は)142キロくらいだと思っていた」と本人が驚くほど、力みのない腕の振りからキレのいいボールを投じた。

 雪辱の舞台まであと2勝だ。「甲子園には絶対に行きたい」と力を込めた。昨夏の甲子園は3回戦進出も、当時早実1年の清宮に本塁打を浴び、姿を消した。今春センバツではエースナンバーと先発の座を松葉行人投手(3年)に奪われ、2番手として登板。4回1失点に抑えたが、初戦創志学園(岡山)に1-5で敗れた。

 甲子園での悔しい思いは、同時に課題も明確にしてくれた。今大会に向け、変化球の精度や直球のキレを磨いてきた。スタンドにはプロ5球団のスカウトが視察。阪神平塚スカウトは「力の入れるところと抜くところ、投球がうまくなった」と評価した。村中秀人監督(58)も「タテの変化球が効いていた」と成長のあとを認めた。

 これでチームは、2年前の夏から県内無敗の33連勝をマーク。同校の持つ県内連勝記録(83年秋2回戦~85年秋準々決勝、86年春2回戦~88年春準々決勝)に並んだ。それでも菊地に緩みはない。「1戦1戦です」と引き締めた。その目は新記録を携えて、甲子園に乗り込む意欲に満ちあふれていた。【高木遊】

 ◆菊地大輝(きくち・ひろき)1998年(平10)7月13日生まれ。神奈川・横浜出身。小1から下倉田シャークスで野球を始め、小6でベイスターズジュニアに選出。中学時代は横浜南ボーイズでベイスターズカップ準優勝。東海大甲府では1年秋からエースを務める。181センチ、81キロ。右投げ右打ち。

 ◆昨夏の菊地対清宮 2年生で背番号1をつけ、8強をかけた3回戦の早実戦に先発。1-1の同点で迎えた3回無死一塁、カウント1-2から甘く入ったチェンジアップを右中間へ運ばれ、これが清宮の甲子園初アーチとなった。4番加藤にも2者連続本塁打を許すなど5失点で敗戦投手に。「清宮は完璧なバッターだった」と悔やんだ。