6年ぶりの短い夏だった。大阪桐蔭ナインのおえつが止まらない。3回に先制ソロを放った中山遥斗内野手(3年)がカベに体を寄せ、むせび泣く。気丈に試合を振り返っていた高山も、両親の顔を見たとたん、涙をこらえられなくなった。

 「ここまで投げられたので、後悔はありません。でもチームの目標は優勝だった。なのにここで負けてしまったことには後悔があります」。腰を折り、エースは泣いた。

 4回に4安打を集中されて2失点。6回に入る前、高山は「最後まで投げさせて下さい」と西谷浩一監督(46)に訴えた。めったに感情を表に出さないエースが、完投を願い出た。「成長につながれば」と監督も試合を託した。6回、先頭の三塁打と2四死球で1死満塁。そこから高山は踏ん張った。もう1点もやらないとギアをあげた。だが4回の失点が勝敗を分けた。

 昨秋明治神宮野球大会で150キロをたたき出した。春の甲子園も活躍を期待された。その裏で、腰痛との戦いが始まっていた。痛みをおして投げたセンバツは2回戦敗退。近畿大会府予選はベンチを外れ、完治を目指した。歴代投手陣が夏を乗り切る力を猛練習で蓄えた春に、追い込めなかった。それでも大阪初戦を迎える前には「今、試合で投げられたらノーヒッターできるかもしれません」と身近な人に明かした。気力を高め、夏に備えていた。

 試合後、高山は「プロ野球に入って、これまでの経験を生かして上の世界でもしっかりやっていきたい」と希望を明かした。この日も146キロをマークした潜在能力は、プロも認める。次の世界では、勝てる投手になる。【堀まどか】