7年ぶり22度目出場の東北(宮城)が、優勝候補・横浜(神奈川)に力負けした。先発したエース左腕渡辺法聖(3年)が初回に先制を許し、3回に3点本塁打を浴びた。1-7で涙をのみ、前回出場の09年以来の勝利に届かなかった。昨夏に仙台育英が準優勝した宮城県勢の初戦敗退は、11年の古川工以来5年ぶり。

 ひょうひょうとストライクを取る渡辺が、東の横綱にスタイルを崩した。0点に抑えて流れを呼びたかった初回。「強力打線。甘い球は投げられなくて。力んでしまった」。初球を打った3番打者以外、5人にボールから入った。4番には2ボール1ストライクとカウントを悪くして、左前に先制打を許した。

 3回には小学6年時に楽天ジュニアで一緒にプレーした、6番公家響(3年)に速球を左翼席中段に3ランを運ばれた。「失投です。今まで打たれた中で一番大きい当たり」と肩を落とす。8回14安打7失点。我妻敏監督(34)は「相手打線を意識しすぎた。渡辺がここまで打たれたのは今年に入って記憶にない。完全に力負けです」と悔しがった。6回までに5盗塁されて、3つが失点につながった。左腕とはいえ、クイックモーションができないエースの弱点も見抜かれた。

 打線は3回に2番笹沼匠(3年)の中前打で1点を返しただけ。先発した横浜のエース藤平尚真(3年)対策として、打撃マシンを球速160キロに設定するなど工夫したが、140キロ台後半の速球に苦しみ13三振を喫した。我妻監督は「ベルト付近の真っすぐを狙っていたが伸びが違った。想像以上」と、プロ注目右腕に脱帽した。

 我妻監督は東北を指揮した09年夏に2勝した。1度コーチに退き、13年8月に再び監督になった。昨夏の宮城大会は初戦2回戦が不戦勝となり、3回戦で涙をのみ実質的に初戦敗退。7年ぶりの甲子園1勝に届かなかったが「去年の敗退からよくやってきた。1、2年生を鍛え直して成長させたい」と言う。渡辺は「本当に悔いはない」と涙を見せず、サポートしてくれた下級生に「感謝したい」と言った。

 全国優勝5度を誇る横浜から学んだ力の違い。もう1度甲子園で勝てる東北をつくるため、この敗戦をステップに新たなスタートを切る。【久野朗】