盛岡大付(岩手)が猛追及ばず、初の8強入りを逃した。6点を追う9回に、4番塩谷洋樹外野手(3年)の3点本塁打と押し出し四球で2点差。1死満塁と一打同点、サヨナラのチャンスを迎えたが、1番石橋泰成内野手(3年)が投ゴロ併殺に終わり、鳴門(徳島)に9-11と涙をのんだ。3試合連続2桁安打と自慢の強打を発揮しながら、3併殺で決定打を欠くなど、全国上位への壁に突き当たった。

 奇跡は起こらなかった。9回、6点差から2点差まで詰め寄り、なお1死満塁。石橋主将の打球は、投手に捕球されて本塁から一塁へ。必死のヘッドスライディングは実らなかった。試合後、同主将は涙が止まらなかった。「最後に打っていれば勝てた。チームメートに申し訳ない」。

 1、2回戦を打ち勝った盛岡大付が打ち負けた。相手を2本上回る13安打を放ったが初回、5回、9回と3併殺。7回は1死満塁から得点できなかった。関口清治監督(39)は「相手投手が粘り強かった」と無念の表情。無安打で2併殺の5番伊藤勇貴(3年)は「体に力が入ってしまった」と悔やみ、石橋主将は「気持ちで負けた」とうなだれた。鳴門は8回、2死から5点を奪った。決定打やタイムリーの後のタイムリー。ここ一番での勝負強さが、勝敗を大きく左右した。

 関口監督がチームを率いて、初めて甲子園に出場した10年春。1回戦で中京大中京(愛知)に4-5で惜敗した。だが点差以上の力を見せつけられた。犠打やスクイズを駆使して得点していた同監督は「長打2本で1点を返されて。全国は打たないと勝てない」と、打撃重視にモデルチェンジした。2年前の夏の3回戦で敦賀気比(福井)に1-16と大敗後は、2ストライクと追い込まれてからの1球勝負で選手を鍛えた。平日5日間の練習は、多い時で4日を打撃オンリーにするなど、こだわってきた。

 8強入りは逃したが、3試合で5本塁打を含む41安打28得点。自慢の打撃で春夏通じて初の1大会2勝と、大きな足跡を残した。関口監督は「2勝は収穫です。打力は継続したい」と言った。効率のいい攻撃、機動力や投手力の強化など「また1つ壁をいただいた」と全国上位への課題は分かった。強打にプラスアルファを加えたニュー盛岡大付で、必ず甲子園に戻って来る。【久野朗】