みちのくの熱い夏が開幕した。岩手では、大野の誕生日が異なる同じ3年生の兄弟バッテリーが、昨春のセンバツに出場した釜石を6-5と撃破した。エース右腕の兄林下勝也が10安打を浴びながら完投し、捕手で3番の弟健吾は3安打。5点差を2イニングで逆転して、七夕の日に東北6県374チームの1番星となった。

 99年4月22日生まれの兄勝也と、00年3月29日生まれの弟健吾のバッテリーが、耐えた。7回表で5-0。「とにかく気持ちを切らさないようにした」と勝也。7回裏に2点差と迫り、直後の8回表を3者凡退に仕留めて、その裏の逆転劇を呼んだ。健吾は「最後まであきらめなくてよかった」とうなずいた。ゲームセットは午後2時1分。福島の開幕戦が同8分に終了し、7分差で大野がみちのく1番星に輝いた。

 「よく双子と間違えられる」と健吾は笑い、誕生日が異なる同学年は珍しい。小学2年からそろって野球を始め、バッテリーを組んだのは小学4年。1年生だった2年前の岩手大会は開幕日の第2試合で初戦を突破し、敗れた花巻東との2回戦で高校入学後初めて、兄弟バッテリーが実現した。自宅の部屋は別々で「あまり話さない」(健吾)が、勝也は「次に投げるボールがかみ合う。サインに首を振ることはほとんどない」と言い、あうんの呼吸がある。屋形場哲也監督(46)は「けんかしているように見えて、実はお互いを尊重している」と話した。

 試合終盤。この春に勝也がマスターしたカットボールを効果的に使った。スライダーなどの制球が甘かったため、健吾が点を取られても冷静になって改善策を見いだした。信頼があるからこそ、勝也も自信を持って投げ込んだ。昨春のセンバツ出場校・釜石に対して、健吾は「結局は同じ高校生なので。気持ちで負けないようにと思っていた」と、気後れはしなかった。

 高校卒業後は勝也が就職を、健吾は進学を希望している。異色の兄弟バッテリーはこの夏が最後。明日9日の2回戦は、3季連続甲子園を狙う盛岡大付と顔を合わせる。「今日より厳しい試合になる。最後まであきらめない」。強敵に勝也が気合を入れた。【久野朗】