プロ注目のスラッガーが、いきなり初戦から爆発した。福岡大会で真颯館の高木渉外野手(3年)が、国内11球団スカウトの前で6回に逆転2ラン。逆方向の左中間への125メートル弾で非凡なセンスを見せつけた。豪雨で被害を受けた地元の朝倉市のためにもラストサマーで輝きを放つ。

 力強く振り抜いた打球は高く高く舞い上がり、左中間スタンドではねてグラウンドに戻ってきた。真颯館4番の高木が放った逆転2ラン。劣勢だったチームを一気に元気づける1発に、高木本人も一塁側ベンチの仲間たちも笑顔になった。

 高木 完璧ではなかったがよく伸びてくれた。打ったのは外から甘く入ったスライダー。少しタイミングが崩されたがあそこまで運べたのは自信になる。

 宗像先発の横手投げ、宮原要投手(3年)のかわす投球にてこずった。末次秀樹監督(59)は「逆方向へ打つ指示を出した直後に高木が打ってくれた。さすが4番ですね」と目を細めた。春から右翼へ引っ張って本塁打が打てるようになった高木も「逆方向へ意識した。久しぶりの左方向へのホームランでした」と白い歯を浮かべた。

 本来は投手だが、昨年11月に右肩を痛めたこともあり今夏は外野手。この日は8回から2番手として「公式戦は今年初めて」というマウンドにも復帰。「まだ痛みがあるときがある」と本来の姿ではないが1イニングを無失点に抑えた。

 チームを元気にした高木は、もうひとつ元気にしたいことがある。実家がある朝倉市が今回の集中豪雨の被害を受けた。家族、親戚には被害はなかったというが、中学時代に汗を流した「球道ベースボールクラブ」の練習グラウンドがベンチも含めて流され「石と流木だらけになった」という。同じ朝倉市出身の桜田晃生遊撃手(2年)とともに「地元に元気を与えたい」と誓って初戦に臨んでいた。

 目標は日本ハム大谷のような「二刀流」。「広角に大きいのを打てるし、投げても抑えてしまうのはすごい」。憧れのスターに1歩でも近づくためにも、地元朝倉のためにも、ラストサマーに全力を注ぐ。【浦田由紀夫】

 ◆高木渉(たかぎ・わたる)1999年(平11)12月6日生まれ、福岡県朝倉市出身。福田小3年からソフトボールを始め、南陵中では硬式の「球道ベースボールクラブ」でプレー。真颯館では1年春からベンチ入り。昨年夏は背番号1のエースで4番を務め4強入り。181センチ、75キロ。右投げ左打ち。