6回1死一、二塁、浦安(千葉)高山雅都内野手(3年)が打った当たりは右前適時打に。二塁走者の高山寛都内野手(同)が6点目のホームを踏み、2人そろって小さくガッツポーズを見せた。

 実は浦安には3組の双子がいる。その中で、そろってベンチに入るのが高山雅都、寛都兄弟。2人は、この夏に特別な思いを胸に臨んでいる。

 2人が3歳の時に父が他界。双子の2人と姉の3人を母初恵さん(46)が女手ひとつで育ててきた。小3で友人に誘われ新浜野球部に入団すると、何より喜んでくれたのは野球が好きな母だった。いつも仕事の合間を縫って、応援に駆けつけた。

 福栄中時代は、土日には朝5時30分から夜8時までのハードな練習に、母はフルタイムの仕事に就きながらも、朝4時には起きて弁当作り。夜も遅くまで家事をしてくれた。「母は頑張り屋さん」と雅都が言えば、「厳しくて、僕らには父代わり」と寛都。仕事に子育てに手を抜かない母の姿に、2人の目標は「野球で全国の舞台に立つ姿を見せること」。その一心で練習してきた。

 その母が昨年5月、がんを患った。母を心配するあまり、雅都は一時、左半身がしびれ、神経症になった。「母は抗がん剤治療で体がつらいはずなのに、いつも笑顔で。僕らも元気でいなければ」と復調した雅都は、新チームでは主将で遊撃手。寛都は二塁手。「2人の二遊間は本当に息が合っている」と大塚知久監督(57)も認める存在に成長した。 今年2月には子供のころ面倒を見てくれた祖母が他界。天国の父と祖母、そして懸命に病気と闘う母に甲子園でプレーをする姿を見せたい-。「母は4回戦の18日には応援に来る。それまでは負けるわけにはいきません」、勇姿を見せるその日まで、高山兄弟の戦いは続く。【保坂淑子】