常葉大橘(静岡)が、逆転サヨナラ勝ちで4年連続の8強入りを果たした。3-5で迎えた9回裏、連打などで同点に追いつくと、2死一、二塁で2番西村龍外野手(3年)が殊勲の中前打を放った。今日23日の準々決勝では、第2シード静岡と対する。

 土煙を上げ、二塁から全力疾走した加部郁哉内野手(2年)が本塁に滑り込んだ。「よっしゃー!」。ベンチから選手が飛び出し、歓喜の輪ができた。

 2点を追う9回裏。ベンチでは先発して2失点の河村海登投手(2年)が責任を感じて泣いていた。先頭打者の加茂魁斗外野手(3年)は「俺が打ってくるよ」と声を掛け、打席に向かった。初球を左前に運び、逆転の雰囲気をつくり出した。ベンチにいる全員が、諦めていなかった。

 連打と相手のミスも絡んで2点を奪い、5-5で迎えた2死一、二塁。西村がアウトコースの直球を中前にはじき返した。人生初のサヨナラ打だ。「みんながつないでくれて、自分が最後に決めると思っていました。もう気持ちしかなかったです」。試合後、八木道政監督(61)は「集中して、みんな打ってくれた。たいしたものだね」と選手をたたえた。

 昨年のチームは春に優勝し、夏は4強入り。だが、現チームになり、春は県1回戦敗退で今大会はノーシード。この日の先発にも2年が5人が名を連ね、「3年生は実力がない」と期待値は低かった。その中で勝ち上がり、3年の加茂は「注目されていないところで、甲子園に行くのがかっこいい。今日の勝利が、甲子園への第1歩になりました」と胸を張った。

 今日の準々決勝では静岡と対する。西村は「自分たちのつなぐ野球で、静高に勝ちたい」ときっぱり。目指すは5年ぶりの甲子園出場のみだ。【保坂恭子】