<君の夏は。>

 2年前の決勝とは違う場所でゲームセットを迎えた。主将の「キヨ」と過ごした、服部雅生副主将(3年)の初めて尽くしの高校野球生活が終わった。「こんなに注目されながらプレーすることはなかった。1度きりの高校野球で、誰も経験できないことをさせてもらいました」。調子を崩したまま夏を迎え、登板機会は1度もなかった。でも、涙はなかった。

 1年春にベンチ入りしたのは、「キヨ」こと清宮幸太郎内野手(3年)と服部の2人だけだった。自然と仲良くなった。本塁打を量産し「超高校級」となった相棒は注目を浴び、取材陣が押し寄せた。「自分としては考えられなかった。清宮は場慣れしていた」。夏に甲子園へ出場した。最速140キロ右腕の服部は2試合で救援。4強入りの原動力となった。

 2年秋の新チームが始まり、清宮とは主将と副主将の間柄になった。「清宮は今までの常識をどんどん変えていった。いいものを取り入れて、やってみていい方に変えていこうとした」。アップの時に体幹トレーニングを取り入れた。スローガンは「GO! GO! GO!」に決定。「アルファベットを使うなんて考えられなかったけど、『お前が言うなら』って思えました」。勢いに乗ったチームは東京大会を優勝し、翌春のセンバツ出場を果たした。

 この夏、マウンドは遠かったが、誰よりも声を出し続けた。「投げられず悔しかった。でも、それを口に出したら野球の神様は振り向いてくれない。清宮もそう言ってました。いいことも悪いこともたくさんあったけど、人間として成長できたと思う」。1年夏。東海大菅生との西東京大会決勝戦で、服部は胴上げ投手になった。ベンチで迎えた最後の夏も、同じ気持ちで戦っていた。【和田美保】(おわり)