主砲が甲子園で強打を披露する。全国高校野球選手権新潟県代表の日本文理は今日12日の1回戦で、鳴門渦潮(徳島)と対戦する。高校通算39本塁打の3番川村啓真右翼手(3年)は、11日の伊丹スポーツセンター野球場での前日練習で、右翼席に2本たたき込むなど絶好調。北信越屈指のスラッガーが自慢の打撃でチームを初戦突破に導く。

 最後は自分らしく締めくくった。初戦前日、仕上げの打撃練習。川村は左打席に入ってマシンと向き合った。8球目、鋭いスイングで捉えると、ライナーで100メートルある右翼フェンスを越える。12球目にも同じ軌道で右翼席へ。

 鳴門渦潮の左腕エース河野成季投手(3年)を想定し、左からコーナーに球が来るマシンの設定。「相手投手は制球力が良さそう」とイメージはできている。その上で「基本の狙いは逆方向。ただ、球が内に入って来たら(スタンドに)運べる」と自信をのぞかせる。「川村の調子は良い。考えながら打っている」。大井道夫監督(75)は、きっちりと初戦に合わせた主砲に頼もしさを感じた。

 川村は2日の甲子園練習でも右翼席に放り込んだ。高校通算40本目を甲子園初戦で…という思いはもちろんある。ただ、ほしいのは打点。「本塁打でなくても、とにかく打点をかせぎたいです」と言う。

 打順は3番。初回に必ず打席が回って来る。「初回の攻撃は大切。1点でも取れば楽になる」。日本文理は新潟大会6試合すべて初回に得点した。この日の練習の合間、川村はレギュラー陣を集めて言った。「県大会からいい試合をしてきた。いい雰囲気でやろう」。先制攻撃で主導権を握る日本文理のスタイルを、甲子園でも貫くことを誓い合った。

 10日の練習後、全員で甲子園を訪れ、おかやま山陽(岡山)-聖光学院(福島)戦の8回から、早稲田佐賀(佐賀)-聖心ウルスラ(宮崎)戦の3回まで観戦した。川村は「試合の雰囲気を知りたかった。1つのプレーで歓声が起きる。それに惑わされないように」と確認した。やるべきことはやった。「試合が楽しみ」。3年間待ちに待った大舞台。強打の披露を勝利につなげる。【斎藤慎一郎】